これほど静謐で、集中して穏やかに剣を構え、なおかつ冷静に相手の剣技を分析できるなど、自分には、できなかったことだらけだ。これが、二つの勾玉が合わさった事による、「進化」、いや「深化」であることは明らかだ。 陽光が降り注ぐ中にもかかわらず、ムラマサの刀から立ち上る「剣気」、その向かう先までもが、見える。 そして。 気合い一閃。踏み込んだ天夢の初撃は、かつてなかったスピードと剣圧を持って、ムラマサの刀を折った。おそらく、ムラマサの想定外のスピードと、パワーだったろう。ろくに刀を振るうこともせず、天夢に圧倒された。 苦鳴をあげ、ムラマサが撤退した。追いかけようと思ったが、間に合わず、かき消すように消えた。そして、禍津邪妄も、姿を消していた。 「ヨロイ」が解除された。時間制限のようなものか、他の理由かわからないが、これまでは自分の意志で解除できていた。この「ヨロイ」は、少し事情が違うらしい。 天夢は紫雲英に言った。 「ありがと、紫雲英ちゃん、助けてくれて。まさか、助けてくれるなんて思ってなかっ……」 あんなことを言われた後だから、まさか、紫雲英が助けてくれるとは思ってもいなかった。 天夢としては、純粋に謝辞を述べようとしたつもりだったが、紫雲英が不機嫌な顔になった。 「ふざけてるンスか? それとこれとは、別ッス。公私混同するほど、私、バカじゃないんで」 今、自分が言おうとしたことが、失礼な物だったことに気づき、天夢は黙って、頭を下げた。 「……天夢ちゃん先輩、姑息ッスよ」 「え?」 「あざとい、っていうか、卑怯っていうか」 割と、マジな目で天夢を見ている。それは、蔑んでいるようでも、呆れているようでも。 紫雲英がどうしてそんな目をするのか、まるでわからない。 「ね、ねえ。紫雲英ちゃん。なに、言ってるの?」 「……『そんな格好』して、心さんの気を引こうなんて、最低ッス」 本当に、わけがわからなかった。
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