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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第172回   捌の八
 なんか、ややこしいな。なので、僕は率直に聞いてみた。
「それじゃあ、帝星建設の『誰か』を説得しても、意味ないってことですか?」
 今までの前提は、「帝星建設関係者に、ムラマサの元になった人がいる」だ。刀の意志っていうんだったら、そもそも僕が帝星建設に潜入する意味はない。
 白倉さんが言った。
「そういうわけでもないんだ。おそらく、鎧武者のディザイア自身の意志も、関係している。あの鎧武者は、『何かを護りたい』、刀は『帝都を滅ぼしたい』。鎧武者は『力』を求め、刀は『使用者』を求めた。だから、鎧武者のディザイアをどうにか出来れば、ムラマサは、相当、弱体化するはずだ。想像でしかないけど、妖刀の方の村正は、禍津邪妄程度の存在になると思うよ?」
 今イチ、僕は理解してないんだ、禍津邪妄とディザイアの違い。今さらだけど、聞いてみることにした。
「すみません。今さら、なんですけど。禍津邪妄と、ディザイア、どんな風に違うんですか?」
 これには、天夢ちゃんが答えてくれた。
「大雑把に言います。欲念が形になっただけのもの、これが禍津邪妄。これは、ある意味、多くの人の欲念・邪念がいくつか集まったもので、固有の意志を持ちません。例えるなら、本能だけで動く、あるいはプログラム通りに動く、ロボットのようなモノです」
 そのあとを、紫雲英ちゃんが言った。
「ディザイアは、誰か、特定個人の意志ッス。知恵はついてるわ、明確な意志は持ってるわ、で、邪念を巻き散らかし放題、挙げ句に撤収すると、次は容姿なんかを変えて現れる、厄介な奴ッス」
 なんとなく、そうじゃないかとは思っていたけど、そうだったんだ、やっぱり。
 僕を見て、白倉さんが言った。
「だから、救世くんには、引き続き、ムラマサの正体探しをお願いするよ」
 僕は頷いた。
「これまで、奴は『眼耳鼻舌身』が封じられてて、『意』のみだった、と思われる。でも、その封だった『三猿の像』が破壊され、その力を取り戻しつつあるんじゃないかな? 本格的に力を取り戻す前に、対処するべきだ、と、ボクは考える。ボクは、猿太閤に対する、有効な一手を探す。だから、しばらく禍津邪妄やディザイアには対応できない。千紗姉様たちに、そのあたりをお願いしたいんだ」
 こうして、緊急会議は終了した。


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