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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第163回   漆の二十
 気がつくと、大石が僕を見ている。
 そして、逃げるように走り出した。
 まずい!
 あの白黒はもう無理だけど、あの大石って男はおさえないと! ディザイアはここから撤収しても、また現れる。その時は、姿とか変わっている可能性があるから、歪みが蓄積するのを防げないかも知れない!
 しばらくすると、併走する誰かを感じた。
「救世さん!」
「天夢ちゃん!」
「異様な気配を感じて! そうしたら、あの男が!」
 頷き、僕は走った。
 天夢ちゃんによると、今、「ここ」にいるのは、僕と彼女だけらしい。
 しばらく行くと、大石が立ち止まった。
 そして、辺りを見回す。
 大石の手前、七、八メートルぐらいのところで、僕たちも同じく立ち止まると、天夢ちゃんが言った。
「貴織さんが来た気配があります。この近くではないですけど」
 そうか。あの男にも、それがわかるのか。もしかしたら、位置関係まではわからないけど、自分に対する脅威が現れた、ぐらいに思っているのかも知れない。
 逃げられないと思ったか、大石の姿形が変わる。
 ガウルだ。
 その時、夜空から勾玉が降りてきた。金は僕に、銀は天夢ちゃんに。
 でも、なんか、おかしい。
 銀の勾玉だけど、天夢ちゃんの頭上五メートルぐらいのところに停まって、まるで、天地間を貫く軸を中心としたかのように、クルクルと高速で回っている。かと思ったら、僕の前にある金の勾玉のところに飛んできた。そして。
 目を開けていられないほどの、それこそ神々しいと言いたくなるほどの光が輝いて、僕の前に現れたのは。
「太極図……」
 あの時現れた、金と銀の勾玉が互い違いに組み合わさった、金と銀で出来た太極図だった。
 ふと見ると、天夢ちゃんが僕に、力強く頷いた。
 理由はわからないけど。
 僕は、これを使わねばならないらしい。
 決心して、その太極図を掴む。キーワードが浮かんだ。でも、それは、初めて鎧念をまとった時のものじゃない。つまり、これを唱えろ、ということ。
 僕は意識をあわせた。


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