気がつくと、大石が僕を見ている。 そして、逃げるように走り出した。 まずい! あの白黒はもう無理だけど、あの大石って男はおさえないと! ディザイアはここから撤収しても、また現れる。その時は、姿とか変わっている可能性があるから、歪みが蓄積するのを防げないかも知れない! しばらくすると、併走する誰かを感じた。 「救世さん!」 「天夢ちゃん!」 「異様な気配を感じて! そうしたら、あの男が!」 頷き、僕は走った。 天夢ちゃんによると、今、「ここ」にいるのは、僕と彼女だけらしい。 しばらく行くと、大石が立ち止まった。 そして、辺りを見回す。 大石の手前、七、八メートルぐらいのところで、僕たちも同じく立ち止まると、天夢ちゃんが言った。 「貴織さんが来た気配があります。この近くではないですけど」 そうか。あの男にも、それがわかるのか。もしかしたら、位置関係まではわからないけど、自分に対する脅威が現れた、ぐらいに思っているのかも知れない。 逃げられないと思ったか、大石の姿形が変わる。 ガウルだ。 その時、夜空から勾玉が降りてきた。金は僕に、銀は天夢ちゃんに。 でも、なんか、おかしい。 銀の勾玉だけど、天夢ちゃんの頭上五メートルぐらいのところに停まって、まるで、天地間を貫く軸を中心としたかのように、クルクルと高速で回っている。かと思ったら、僕の前にある金の勾玉のところに飛んできた。そして。 目を開けていられないほどの、それこそ神々しいと言いたくなるほどの光が輝いて、僕の前に現れたのは。 「太極図……」 あの時現れた、金と銀の勾玉が互い違いに組み合わさった、金と銀で出来た太極図だった。 ふと見ると、天夢ちゃんが僕に、力強く頷いた。 理由はわからないけど。 僕は、これを使わねばならないらしい。 決心して、その太極図を掴む。キーワードが浮かんだ。でも、それは、初めて鎧念をまとった時のものじゃない。つまり、これを唱えろ、ということ。 僕は意識をあわせた。
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