天夢ちゃんの治療を終えた結城さんが言った。 「他の護世士は、みんな、護世具……アタッキングツールを持って闘います。そのためには、勾玉が必要。それはおそらく、平常時にその力が暴走して、ここに悪影響を与えないための、無意識の措置ではないか、と、いわれています。……まあ、白倉さんのように、ディザイアを倒せないまでも、普段からとんでもない力が使える人もいるんですが」 ……そうだったんだ、勾玉のシステムって。でも、あの白倉さんでさえ、「よくわからない」みたいなこと言ってたから、他にも理由がありそう。 「でも、君はディザイアと闘えた」 「……でも、倒せないどころか、ダメージを与えることさえ、出来ませんでした」 「それでも、すごいと思うよ? 例えるなら、生身でロボットと闘ったようなものなんですから。ディザイアの力、人間を遙かに超えてるでしょ?」 確かに、家の柱を折ったり、空高く舞い上がったり、なんてこと、してたな。 「それは、君が体術をマスターしてるからじゃないかな?」 「体術?」 「うん。『武器』や『力』で対応したんじゃなく、『技術』で対応した。多分、無意識のうちに」 「……そう、でしょうか?」 「うん。報告書を元にして、御苑生衣祭司への提出用に、審議書っていうものが作られるんだけど」 ……ああ、そんなものがあるんだ。 「その審議書を読むと、君に対する評価は、著しく低い。まだまだ新人ですからね。でも、君に対する考え方を変えないとならない。君は、もっと自信を持っていい」 結城さんが微笑む。その笑顔と表情に、ちょっと恥ずかしくなった僕だけど、さっきの疑問を思い出した。 「結城さん、どうして、ここに?」 「……ああ、それですか……」 と、結城さんは微妙な表情になった。 「白倉さんから、言われまして、ね。神室さんに危機が迫ってる、多分、僕の力が必要だから、冥空へ送り込む、って」 「……そう、ですか……」 白倉さん、メチャクチャするなあ……。 「その時、彼女、『このぐらいなら、問題ない』って意味不明のこと言ってたなあ」 ? もしかして、「結城さん一人を冥空に送るぐらいなら、ペナルティーはない」ってことかな? 「でも、天夢ちゃんが危ないから、結城さんを送る、って、白倉さん、予知能力も持ってるんですか?」 あの人なら、そんな力、持ってそうだもんなあ。 「いや、それは……」 と、結城さんは困ったような笑みを浮かべた。 「彼女、高谷さんに、メンバーのことを占わせてるんです。しょっちゅうではありませんが。それによって、メンバーの誰かに、危機が迫るかどうかを、チェックするのだとか」 「へえ……。白倉さんって、メチャクチャなようでも、仲間想いの人だったんですね」 なんか、ちょっと感動。 でも、結城さんは、かわらず困ったような笑みを浮かべてる。 「……うん。ただし、女性メンバー限定だけどね」 「……はい?」 「彼女がチェックするのは、神室さんたち、女性護世士だけなんです」 「……もしかして、白倉さんって、素でストーカー予備軍だったりしませんか?」 「救世くん。それ、みんなが思ってて、誰も口にしないことだから」 苦笑を浮かべた結城さんを見て、僕は。 「……なんなんですか、あの人?」
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