「なんていうか、テレビで言うと、CG合成のような、不自然な感じがある」 天夢ちゃんが息を呑んだ。 「それって、ディザイアになる人間が、顕空から冥空に来て、間もない時のサインです! 救世さん、わかるんですね!?」 「サインがどう、っていうのは、わからないけど、強烈な違和感がある。……天夢ちゃん、感じないの?」 頷き、興奮した様子で、天夢ちゃんは言った。 「救世さん、すごいです!!」 そういう風に言われると、悪い気はしないけど、天狗になっちゃいけない。爺ちゃんから、しつこく言われてたんだ。「心の修養を重んじろ」って。あと「思い上がったら、そこで成長が止まる」とも言われたなあ。 まあ、それはともかく。 念のため、っていうわけじゃないけど、あの人の名前とか、特徴とか、確認しておこう。 僕が歩き始めたときだった。 あの男の人と、僕との間に、静電気のようなものが走るのがわかった。思わず、懐に手をやる。そこにあったものを出した。 一枚の咒符があって、その文字が、光りながら、放電みたいな光を放っていた。 「……ディザイア!」 僕は、男を見た。 男も、僕を見た。 男の表情が歪み、ついで、体が崩れる。 「ダーシーさん!?」 そんな感じの言葉を叫んで、沢子さんが悲鳴を上げる。 卒倒しかける沢子さんを支え、ほとんど、直感的な動きで、その場から離脱する。 人々の悲鳴が響く中、男の姿が変わっていた。その姿は。 「……カッパ。いや」 カッパの姿だけど、手足が異常に長い。腕の長さが、身長より長い。オマケに、五本の指も、妙に長い。 ということは。 「ガウル、か」 ガウルは、カッパの一種。特に、手足の長いやつで、臭い。出会うと死ぬ、なんていう、物騒な伝承を残している地方もある。 勾玉は……。 降りてこない。 じゃあ、それまで、時間稼ぎをしないと! と思ったら、不意に、僕のところにやつの拳が飛んできた!
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