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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第15回   壱の十三
 会議が終わったのは、午後五時四十五分。本当に簡単な連絡だけだ。先週の土曜日も、「大正十二年界では、そろそろ『月末』なので、注意しろ」みたいなこと、言われただけだったし。
「救世さん!」
 建物を出たところで、天夢ちゃんから声がかかった。
「よかったら、これから、喫茶店で、お茶でもしませんか!?」
 笑顔で、そんな事を言う。
 彼女みたいな美少女からお誘いを受けるのは嬉しいけど、シングル歴と実年齢が同じである身としては、どうしても疑念が出てきてしまう。なんか裏があるんじゃ、って。
 もちろん、テイボウのメンバーだから、そんな邪(よこしま)な人間は、そもそもここにいないはず。でもやっぱりねえ。
 まあ、メンバーとしてのコミュニケーションなんだろう。僕がOKの返事をしようとしたとき。
「心さん、これから、晩メシ、どッスか?」
 紫雲英ちゃんが笑顔で、近くに来た。
 すると。
「あ、あたし、帰りますね」
 微妙な笑顔を浮かべて、天夢ちゃんが駆け出した。
「あ、天夢ちゃん!」
 声をかけたけど、彼女はそのまま、駆けて行った。
「どうしたんスか?」
「え? あ、いや、なんでも」
 なんか、ものすごく悪いコトした気分になった。
「じゃあ、行きましょうよ、晩メシ! ここからバスで十分ぐらい行ったところ……安立(あんりゅう)区に、新しい中華屋が出来たンス!」
「……もしかして、『敵情視察』だったりしない?」
「心さん、カンがいいッスねえ」
 と、感心したように紫雲英ちゃんが言う。
「で、僕がオゴる、と」
 笑顔で頷いて、紫雲英ちゃんは言った。
「一つでも多くのメニューをチェックするには、軍資金が足りないンスよ!」
「家からは出ないの?」
 と、言いそうになって、やめた。家を挙げて余所の店の味見をするって、有り得ないから。
「……まあ、いいよ。でも、僕もそんなにお金があるわけじゃないから」
「大丈夫ッスよ。とりあえず今日は、ラーメンとチャーハンと天津飯と餃子を、チェックしたいんで、三千円もあれば」
「『痛い』って、それは」
 僕がそう言うと、紫雲英ちゃんが「ヨロシクっす!」と、Vサインを出した。


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