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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第146回   漆の三
 いくつか、聞かねばならないことがある。
 手袋をはめ、一応、ビニル袋に入れたあとで、手紙を読み、佐之尾は聞いた。
「この『上』というのは? 確か、津島さんは、フリーで、一人で動く事が多かったそうですが?」
 奥坂は、頷いた。
「確かに、彼はフリーでした。ですが、この間、二ヶ月ほど前でしたか、中央の、ナントカっていう、週刊誌と専属契約するかも、みたいなことを言ってましたから、それじゃないか、と」
 それは、初耳だった。確認せねばならない。
「では、『銀色のあれ』とは?」
「それなんですが」
 と、奥坂は、首を傾げた。
「私にも、さっぱりわからないんです」
「でも、あなたへの手紙に書いてある、ということは、あなたにも理解できる、という前提だと思いますが?」
 奥坂は唸る。
「本当に、見当がつかなくて。職業柄、いろいろ怨まれる、みたいなことは言っていました。おそらくその中の一つ、ではないか、と。私が聞かされた、『そんな話』の中には、『銀色』なんていうキーワードは、ありませんでしたから、多分、私に話したことだ、と、勘違いしているのでは?」
「そうですか。あともう一つ。津島さんにお金、貸してたんですか?」
「ええ。でも、過去の話で、もう半年も前に、完済してます。だから、ここも意味がわからなくて」
「なるほど。……ところで、この手紙が入っていた封筒は?」
「すみません。うっかり、処分してしまって」
 封筒に、なにかの手がかりがあるとは思えないが、それでも、捜査資料は多い方がいい。
 それを残念に思いながらも、とりあえず、もう聞くことはない。例の「銀色のあれ」が気になるので、何か思い出したら、報せて欲しいと伝え、その日は、奥坂には帰ってもらった。


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