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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第145回   漆の二
 佐之尾は、前日の夕方、所轄署経由で捜査本部に来た、奥坂直次(おくさか なおつぐ)という、津島の知人の話を思い出していた。

「私、津島さんの知人の、奥坂直次といいます」
「知人。それは、どのような?」
 知人と言っても、いろいろある。佐之尾は、聞いてみた。
「私が勤めている『エイト・ウィール』っていう、雑貨輸入販売の会社の、広告を、去年の春、津島さんが運営するサイトで打ってもらって以来の、知り合いです。なんていうか、ウマが合いましてね」
 そして、奥坂は語った。
 彼によると、奥坂は、七月十四日の朝から、仕事の関係で、海外へ出張に行ったのだという。そして、二週間後の七月二十八日、帰国した。その日は、疲れていたこともあり、溜まっていた郵便物は整理しなかった。翌日の二十九日の土曜日、郵便物の中に、津島からの手紙があることに気づいたという。そして。
「帰国して、ニュースをチェックして、彼が死んだことを知ってて。この手紙、どうしようか、と思ったんですが、もしかしたら、事件に関係があるんじゃないかと思ったら、警察に届けた方がいいな、と思って。関わるのが、怖かったんですけど、これも市民の義務ですし」
 と、奥坂は、A四サイズのコピー共用紙を、二枚、鞄から出し、佐之尾に渡した。
 それには、こうあった。
 まず、一枚目。

奥坂さん。            RO 110 Fr BPP
いきなりこんな手紙を託してすまない。
今、俺は県議会議員の土原満武議員と帝星建設の癒着を調べてる。
先月、俺が個人でやってるニュースサイトにメールが届いた。
帝星建設社員の、幹山由貴彦という人物だ。
俺は、彼に会って、癒着の証拠を掴んだ。

上に言うかどうか迷ったが、俺一人で動くことにした。
石頭の連中に言っても、意味は無い。
津島の……俺自身の責任でないと説得力もないだろうし。そうだ、
銀色のあれ、どうにか、なっただろうか?
これでも、気にしてるんだ。
うらみつらみもあると思うが、これも俺が選んだ仕事の業だ。
かくごしていたが、正直なところ、きつい。
しかたがないといえば、仕方が無い。すまない、お前に借りてた
金だが、必ず返す。この記事がものになれば、問題は無い。
これから、また、彼に会う。

 そして、二枚目。

これから夏も本番だ。
体に気をつけてくれ。
もし、俺が無事で、記事が書けたら、また飲もう。

しつこいようだが、本当に頼む。


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