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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第143回   陸の二十五
 七月三十日、日曜日。
 夕方の六時頃だった。
 副頭から、僕に電話がかかってきたんだ。
『救世くん、あの話、決まりました』
「そうですか」
『とりあえず、派遣の清掃員、ということになりますが、その内、内情を探ることが出来る位置に配置されるよう、計らいます』
「わかりました」
『急で申し訳ないんですが、八月一日、火曜日から、清掃会社の方に顔を出して、研修を受けてください。詳しくは 明日、メールします』
 そして、電話は切れた。
 この間、貴織さんの昔の知り合いが、帝星建設の社員だって事がわかった。で、その人を「縁」にして呪術を仕掛け、さらに、副頭の人脈を使って、帝星建設に『入り込む』ってことになったんだ。そうすれば、ムラマサの正体がつかめるかも、ってことだった。
 やっぱり、ムラマサや魔修羅大公は、テイボウの妨害をしているからね。そもそも、敵意剥き出しだから、話し合いどころじゃないし。
 でも、かなりの確率でムラマサは帝星建設関係者らしいし、その元になっている人に接触できて、話が出来れば、ひょっとしたら、こちらの事情を理解してくれるかも知れないし、魔修羅大公たちも、どうにか出来るかも知れない。
 肝心の、中に入り込む役目だけど。
 僕しかいないんだ。主頭は県警の刑事さんだし、副頭は上石津市郷土文化歴史研究センターのお仕事がある。結城さんは開業医で、浅黄さんは市役所勤め。貴織さんはフォーチュナーハウスのお仕事があるし、千宝寺さんは、塾の講師だから、講義の準備とかで昼間は忙しい。天夢ちゃん、紫雲英ちゃん、白倉さんは、高校生で、そもそも「そこ」ではアルバイトができない。面河さんは例によって表に出られない。
 なので、僕しか、動ける人間がいないんだ。なんとなくテイボウって、もっと規模が大きいような感じがしてきてるんだけど、とりあえず、ここでの実働メンバーはこれだけ。
 肝心の「誰がムラマサか」については、「検討する」ってことだったけど、とりあえず、中に入り込めば、これからのことも変わってくるってことだった。
 副頭からの電話が終わったら、また、電話が鳴った。
「……あ、実家からだ。……もしもし?」
『おお、心か』
「ああ、爺ちゃん。どうしたの?」
『お前、全然、戦力になっておらんそうではないか!』
「……うん」
 これは、実感してる。
『なので、ワシが、稽古をつけに行ってやる』
「え? 爺ちゃん、こっち、来るの?」
『お前がこっちに帰ってくるわけにもいかんだろうが』
「ごもっとも」
 というわけで、爺ちゃんが、僕に稽古をつけに、来てくれるということになった。
 明日から、忙しくなりそうだ。


(陸「比翼の『鳥』」の一・了)


 実は。

・矢南徹明……岡田浩暉氏。

 だったりしました。

 だから、もろもろ、ゴメンって……。


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