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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第14回   壱の十二
 会議の報告は、やっぱりこの前の、僕の任務失敗の件だった。みんな、一様に溜息をついたり、落胆したり。
 本当に申し訳なく思う。
 あと、見たことない女の子だけど。
 彼女が、占法士で、いろいろと占断しているそうだ。大正十二年界の時間が巻き戻ったときのみ、会議に顔を出すという。その時は、別に席が用意してあるけど、今日は白倉さんが欠席ということもあって、その席に臨時についたという。
 名前を、高谷清嘉(たかや さやか)さんといい、天夢ちゃんと同じ学校で、同じ学年。クラスは違うそうだけど。
 高谷さんが静かな声で言った。
「まず、大空震の影響ですが」
 これが、重要な事だ。みな、固唾を呑んで、見ているのがわかる。
 それを意識しているのかいないのか、水島さんは無表情で言った。
「これまで通り、『歪み』として蓄積されました。ですが、これですぐに魔災が起きるという事ではないようです。ただ」
 と、ちょっと首を傾げる。
「これまでとは、少し、違うようです」
 副頭が眉をひそめる。
「どういうことですか?」
 その声に、高谷さんが、副頭を見て答える。
「まず、坎為水(かんいすい)の三爻(さんこう)と出ました。『終(つい)に功なし』。つまり、どうにもならない事態が出来(しゅったい)したということ。この推移を、白倉流にて、占断しました。『加美(かみ)より切れ、伸進(しんしん)の機を待つべし』。さらに結論として、神査木(カムサキ)にて、視ました。『宇牟(ウム)。すなわち、天地、未だ開けざる』。どうやら、なんらかの重大な事態、あるいは、推移を見守るよりほかにない事態になったようです」
 なんだか、空気が重くなった。
「ですが」
 と、高谷さんが、みんなを見渡す。
「換言すれば、『事』が、何らかの動きを見せる前兆ともいえます」
 その言葉を、副頭が継ぐ。
「そうですね。もしかすると、魔災の元凶、それを叩けるかも知れません。『好機』と捉えましょう」
 高谷さんが頷いて言った。
「確認しておきます。この占断が有効なのは、次の『巻き戻し』まで。その際に、どう行動するかで、その先が変わります。いつも言っていますが」
 と、彼女はみんなを見回す。
「悪い未来は、変えていかねばなりません」
 この言葉に、僕は無意識に頷いていた。


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