戦いは終わったらしい。何だか、二人ともすごい。特に白倉さんは、ムラマサを氣合いで圧倒したり、魔修羅大公と互角に渡り合ったり! 天夢ちゃんも、「すごいですね、白倉さん」と、感動している。 その言葉に頷いたとき。 白倉さんが、片膝をつき、そして、そのまま、倒れ込んだ。 慌てて駆け寄ると、一足早く千宝寺さんが、駆けつけ、白倉さんを、抱き起こした。 「白倉!」 その言葉に、白倉さんが、薄く目を開いた。そして。 「……ハハ。ちょっと、無理、しちゃったな。強力な咒、特に大光世の真力(しんりき)を引き出す咒を連発しちゃった。ボク、もう、ダメかも知れない……」 思わず、僕は言った。 「白倉さん、しっかりして!」 「……救世くん。短い間だったけど。……キミには期待、してるよ……」 視界がブラックアウトしているのか、白倉さんは目を開いているけど、僕を見てはいない。 白倉さんが、手を空にさしのべる。 「amoureux、ボクのamoureux、どこ、どこにいるの……?」 「ここです、白倉さん」 天夢ちゃんが近づき、白倉さんのその手を取る。 「ああ、amoureux。無事でよかった。キミは知らないけど、実はね、ボクは大光世の真力を引き出す回数に、リミットがあるんだ。リミットに達すると、ボクの命は……」 「白倉さん……」 天夢ちゃんが、涙声になっているのがわかる。 「残念だよ。これからも、キミと戦い続けなければ、ならないのに……」 白倉さんの瞳から、涙が流れ落ちる。 「amoureux、やつは、……魔修羅大公は強敵だ。ボクが大光世の真力をぶつけてさえ、倒せなかった……。でも、キミたちなら、きっと……」 「白倉、さん……」 そして、白倉さんは、か細い声で言った。 「千紗、姉様……。最後に、ボクのお願い、聞いてもらえる、か、な……?」 そう言うと、白倉さんが目を閉じた。 その手から力が抜けたんだろう、天夢ちゃんが焦った感じで、白倉さんの手を握る。 「白倉さん、白倉さん!!」 その言葉に、白倉さんが、かすかに目を開ける。でも、次に出てきた言葉は、天夢ちゃんに向けたものじゃなかった。 「千紗姉様……。最後に、その胸の中で……」 僕の視界がにじむ。ふと、千宝寺さんを見た。 千宝寺さんの表情は……。 ……あれ? なんか、「うんざり」って感じだ。 そう思っていたら。 「いい加減にしろ、何度も同じ手に引っかかるかッ!」 そう言って、千宝寺さんは、白倉さんを地面に転がす。 「あいた!」 そんな声を上げて、白倉さんが上半身を起こす。 ……何が起きたの? ていうか、何が起きてるの? 「え、と?」 と、天夢ちゃんも、きょとんとなってる。 「こいつはな、こういう手を使って、『いろいろ』と『やって』きたんだ!」 憤慨したように、千宝寺さんが言った。 起き上がった白倉さんは、いつの間にか「ヨロイ」が解除されてた。 肩で息をしながら、白倉さんは言った。 「真力を連発すると、消耗が激しいのは、ホントだよ?」 様子を見ると、消耗するのは、本当らしい。 「だが、死ぬ訳じゃないだろ?」 「気遣ってくれてもいいじゃないか」 「だからといって、唇を許す理由には、ならん!」 天夢ちゃんが、僕の肩を、ちょんちょんとつついた。 「あの。何がどうなってるんですか?」 「……僕の方が知りたいかな? 天夢ちゃんの方が先輩だし?」 「護世士としての白倉さん、今回、初めて見るので」 そういやあ、そんなこと、言ってたっけ。
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