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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第139回   陸の二十一
 戦いは終わったらしい。何だか、二人ともすごい。特に白倉さんは、ムラマサを氣合いで圧倒したり、魔修羅大公と互角に渡り合ったり!
 天夢ちゃんも、「すごいですね、白倉さん」と、感動している。
 その言葉に頷いたとき。
 白倉さんが、片膝をつき、そして、そのまま、倒れ込んだ。
 慌てて駆け寄ると、一足早く千宝寺さんが、駆けつけ、白倉さんを、抱き起こした。
「白倉!」
 その言葉に、白倉さんが、薄く目を開いた。そして。
「……ハハ。ちょっと、無理、しちゃったな。強力な咒、特に大光世の真力(しんりき)を引き出す咒を連発しちゃった。ボク、もう、ダメかも知れない……」
 思わず、僕は言った。
「白倉さん、しっかりして!」
「……救世くん。短い間だったけど。……キミには期待、してるよ……」
 視界がブラックアウトしているのか、白倉さんは目を開いているけど、僕を見てはいない。
 白倉さんが、手を空にさしのべる。
「amoureux、ボクのamoureux、どこ、どこにいるの……?」
「ここです、白倉さん」
 天夢ちゃんが近づき、白倉さんのその手を取る。
「ああ、amoureux。無事でよかった。キミは知らないけど、実はね、ボクは大光世の真力を引き出す回数に、リミットがあるんだ。リミットに達すると、ボクの命は……」
「白倉さん……」
 天夢ちゃんが、涙声になっているのがわかる。
「残念だよ。これからも、キミと戦い続けなければ、ならないのに……」
 白倉さんの瞳から、涙が流れ落ちる。
「amoureux、やつは、……魔修羅大公は強敵だ。ボクが大光世の真力をぶつけてさえ、倒せなかった……。でも、キミたちなら、きっと……」
「白倉、さん……」
 そして、白倉さんは、か細い声で言った。
「千紗、姉様……。最後に、ボクのお願い、聞いてもらえる、か、な……?」
 そう言うと、白倉さんが目を閉じた。
 その手から力が抜けたんだろう、天夢ちゃんが焦った感じで、白倉さんの手を握る。
「白倉さん、白倉さん!!」
 その言葉に、白倉さんが、かすかに目を開ける。でも、次に出てきた言葉は、天夢ちゃんに向けたものじゃなかった。
「千紗姉様……。最後に、その胸の中で……」
 僕の視界がにじむ。ふと、千宝寺さんを見た。
 千宝寺さんの表情は……。
 ……あれ? なんか、「うんざり」って感じだ。
 そう思っていたら。
「いい加減にしろ、何度も同じ手に引っかかるかッ!」
 そう言って、千宝寺さんは、白倉さんを地面に転がす。
「あいた!」
 そんな声を上げて、白倉さんが上半身を起こす。
 ……何が起きたの? ていうか、何が起きてるの?
「え、と?」
 と、天夢ちゃんも、きょとんとなってる。
「こいつはな、こういう手を使って、『いろいろ』と『やって』きたんだ!」
 憤慨したように、千宝寺さんが言った。
 起き上がった白倉さんは、いつの間にか「ヨロイ」が解除されてた。
 肩で息をしながら、白倉さんは言った。
「真力を連発すると、消耗が激しいのは、ホントだよ?」
 様子を見ると、消耗するのは、本当らしい。
「だが、死ぬ訳じゃないだろ?」
「気遣ってくれてもいいじゃないか」
「だからといって、唇を許す理由には、ならん!」
 天夢ちゃんが、僕の肩を、ちょんちょんとつついた。
「あの。何がどうなってるんですか?」
「……僕の方が知りたいかな? 天夢ちゃんの方が先輩だし?」
「護世士としての白倉さん、今回、初めて見るので」
 そういやあ、そんなこと、言ってたっけ。


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