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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第131回   陸の十三
 青清木から戻る途中、安立区に新しく出来た「将(まさ)」という中華料理屋で昼食を済ませ、署に戻ると、国見あてに二人、来客があった。
 一人の男性が、国見に名刺を差し出す。
「私、こういうものです」
 その名刺を読む。
「旗野薬品 総務部労務管理課 課長 村嶋(むらしま) 将二(まさじ)」
 男性が苦笑いで訂正する。
「しょうじ、です」
「え? ああ、すみません」
 ついさっき「将」と書いて「まさ」と読む中華料理屋へ行っていたせいか、つい「まさじ」と読んでしまったようだ。
「で、私に、何か?」
「私ではなく、兄なんですが」
 と、将二は、背後にいる男性を紹介する。
 男性の名前は、村嶋康造といい、かつて、石毛建設設計の社員だったという。
「実は……」
 と、康造は、驚くべきことを語り始めた。

 デスクにつき、国見は佐溝殺しについて、今の話を加えて整理した。
 殺された佐溝充政は、小金井晴幸……石毛晴幸による横領を、把握していたという。そして、晴幸の父である石毛社長を脅してきていた。社長の様子がおかしいことに気づいた康造は、問いただし、横領と脅迫のことを知った。だが、その横領した金は、石毛建設の負債の補填に回っていたのだという。そこで、やむなく脅迫に応じていたらしい。
 大体は、石毛社長が外で佐溝と会って、金を渡していたらしいが、時折、康造がその役をしていたという。
「すみません。もっと早くに来るべきだったんですが、社がたいへんなことになって、それどころじゃなくなってしまって。私自身も、それどころじゃ……。でも、これだけはわかってください! 社の負債は、帝星建設から、押しつけられたものだったんです!」
 後半は強行犯係の領分ではないので、知能犯係へ案内した。
 康造は、故郷に帰ることになっており、区切りをつけたくて、出頭してきたのだという。
 事実の隠蔽、ということになるが、故意でも悪質というほどでもなく、これについては、刑事課課長とも相談する必要がある。
「佐溝は、横領の事実を知っていた。そして、石毛社長を脅していた。聞き込みにあった、佐溝が外で会っていた男性、おそらくは、石毛社長か、村嶋さんだったんだな。となると、石毛晴幸を脅していない、とは、考えられない……」
 時系列に整理してみる。
 まず、何らかの方法で、晴幸の横領を知った佐溝は、晴幸を脅した。だが、その金額が不足していたか、あるいは晴幸が、父である石毛社長に泣きついたか、そこはわからないが、石毛社長も脅迫に応じるようになった。
 そして。
 晴幸は、佐溝を殺害するに至ったのだろう。
 だが、だとすると、おかしなところが出てくる。


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