20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第13回   壱の十一
 そして、伊達(だて)紫雲英(れんげ)ちゃん。着ているのは白いセーラー服に、臙脂色のネクタイ。プリーツスカートは、青地に黄色のタータンチェック。これは、芯岳区の東部にある市立上石津東高等学校の制服だ。彼女は一年生だという。彼女の家は芯岳区の西で中華料理屋をやっていて、僕はこっちに来て一週間ほど、アルバイトでお世話になった。紫雲英ちゃんは、セミロングヘアの、目がクリッとした子で、どこか小動物っぽい。一方の天夢ちゃんは、掛け値なしに美少女だと思う。
 制服っていうことは、二人とも学校から直行したんだろう。天夢ちゃんが僕に笑顔で会釈する。紫雲英ちゃんが、ニカって感じで笑って、僕に小さく手を振った。
 それに応え、僕も円卓の席に着く。僕の向かいに座っているのは、結城(ゆうき)亜紋(あもん)さん。三十代半ばぐらいの、眼鏡をかけて、茶色の髪のえり足を伸ばして結わえた、優しい雰囲気の男性だ。以前は、どこかの大病院でお医者さんをしていたそうだけど、いろいろあって、やめたらしい。この辺の事情を聞けるほど、僕はまだ親しくない。ちなみに、結城さんは、冥空裏界へ行く事はできるけど、戦闘には参加できない。つまり、アタッキングメンバーじゃない。
 そして、結城さんの隣にいるのは……。
 天夢ちゃんと同じ制服を着てるけど、誰だろう? 初めて見る。リボンの色が青いから二年生だっていうのはわかるけど、それ以上の事はわからない。髪の長さは天夢ちゃんと同じ、背中の中程ぐらいで、同じストレートの髪。でも顔つきはちょっときつめかな? 表情とか感情を読みにくいところがある。肌が、抜けるように白い美少女だ。もしかして、この子が「白倉(はくら)さん」かな?
 副頭が言った。
「先ほど、連絡がありました。浅黄(あさぎ)くんは、残業が入ってしまったので、今日は、来られないそうです。白倉くんは、土曜日の定例会議でお話ししたとおり、土曜に白倉本家に行って、まだ、こちらに帰って来てません。梓川(あずさがわ)くんは、今夜は出先からこちらに戻れないそうです」
 この円卓にいるのは、上から見ると、こんな感じだ。十二時の位置は今は空席。本来は、ここには総責任者の御苑生さんっていう人が来る。一時の位置には江崎副頭、二時の位置に千宝寺さん。三時の位置に面河(おもご)さん。この面河さんが、例の宿舎の、もう一人の住人。で今は空席。ていうか、この人、会議では、見た事ない。もっとも、僕も、まだ二回しか定例会議を経験してないけど。四時の位置に僕、五時の位置に天夢ちゃん。六時の位置に、今日、欠席してる浅黄さん、七時に同じく欠席の梓川さん、八時に紫雲英ちゃん。九時に例の見た事ない女の子、十時に結城さん。そして十一時に主頭、つまりチーフの佐之尾さん。今日は、空席。御苑生さんと主頭は、本当に重要な会議の時にだけ出席するという。言い換えると、この二人が出席したときは、それは、重大な事態が発生したってこと。
 この席次には、御苑生さん、佐之尾主頭、江崎副頭以外、特に意味はないらしい。なお、今日、欠席している白倉さんは、普段は、今、例の見た事ない女の子が座っている位置についているらしい。
 浅黄さんっていうのは、男の人で、なんていうか、気のいいアニキって感じの人。年は、二十九歳だそうだ。白倉さんっていうのは、タイミングが合わなくて、まだ会った事がない。天夢ちゃんと同じ、高二らしい。今、「白倉本家」っていうところに、なんらかのアイテム(名前だけは「大光世(だいこうせい)」って聞いたけど、なんなのか、わからない)を取りに行ってるそうで、まだ帰ってない。梓川さんていうのは、千宝寺さんと同い年ぐらいの人で、眼鏡かけた綺麗な女性。中央区の西にある中央西(ちゅうおうにし)区にある、「フォーチュナー・ハウス」っていう占い専門店の、専属占い師さんだ。
 三人ともアタッキングメンバー。でも。
 東京の命運をかけた会議に「残業で来られない」とか、「本家に行ってて来られない」とか、「出先から戻れない」とか、そんなの、あるんだろうか? 霊術や霊学の講義を受けてるときに聞かされたけど、こういうのは「縁(えにし)」の力が働くから、不思議と都合がつくとか、辻褄が合うらしいけど。
 してみると、今日の会議は、それほど重要じゃないってことか。
「なので、会議を始めます。今日は、簡単な連絡事項程度です」
 やっぱり。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 2622