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作品名:帝都、貫く、浄魔の拳 作者:ジン 竜珠

第12回   壱の十
 僕は、もともとこの街の出身じゃない。それどころか、遠方の県に住んでて、その県内にある大学に通っていた。
 でも、今年の一月、爺ちゃんに言われたんだ。
「心。『お役』を果たすときが来た。お前の技と力と命、存分に燃やしてこい!」
 爺ちゃんは昔、テイボウの前身である、帝都浄魔連合……帝浄連に所属していた。そして、冥空裏界の大正十二年界で、「禍津邪妄(まがつじゃもう)」と呼ばれる、怪物を退治していたそうだ。この禍津邪妄が溢れると、魔災が起きる、ってことらしかった。
 爺ちゃんは、三十年ほど前に引退したそうだ。で、その子ども……父ちゃんや叔父さんには、「素質」がなかったそうだけど、僕にはあったらしい。なので、僕は小さい頃から救世一族伝来の体術・央心流拳道を修行してきた。それとあわせて、俗に「霊術」と呼ばれるものも。
 そして、去年の十二月半ば。テイボウの今の総責任者(正式には「衣祭司……いさいし」というそうだ)である御苑生(みそのお)さん、て人から、僕にテイボウに加入するように、との連絡があったという。そこから先は、めまぐるしかった。大学の休学届を出し、央心流の稽古や霊術の修行が、日常の全てを占めるようになった。師範(爺ちゃんだ)や師範代(叔父さんだ)が、ほぼつきっきりで、体技の修練を課したかと思うと、霊術の方の師範(四つ上の従姉妹だ)が、これまたほぼ一日中、難しい講義やら、修行をさせてきた。
 そして、約半年後の六月中頃にここに来て、しばらくして大正十二年界に行ってしまって、今に至る。

 月曜日の午後四時。僕は連絡を受けたんで、テイボウの本部へ向かっていた。玄峰のバス停からバスに乗って、玄峰の南にある伊風(いふう)っていうエリアで市電に乗って、そこから、市役所のある中央区を通って、東へ回り、本部がある芯岳区へ入る。そこの「芯岳北」っていう駅で降りてバスに乗って五分ほどしたら、本部がある、海を臨む小高い丘の麓に着く。
 何万年も昔にはこの辺りに山脈があったけど、火山爆発か何かで山体が崩れたらしい。この丘は、その名残なんだそうだ。
 本部の建物は、白亜のお屋敷風。大正の終わり頃に建てられたらしい。当時の帝浄連のメンバーに華族の裔(すえ)の人がいて、その人の趣味とか、発案らしい。ちなみにその裔の人、「裏清華(うらせいが)」とかいう、歴史の表には出てこないけど、時の政権にすら影響を及ぼせる家柄……なんだそうだ。この辺は、よくわからないなあ。
 ここに到着したのが、午後五時を、二十分ほど回ったところだった。麓からここまで、歩いて、十分ぐらいだ。約束の時間は、午後六時だから、余裕だ。
 一応、免許は持ってるんだけど、バイクも車も持ってない身としては、こういう手段に頼らざるを得ない。
 本部の地下一階にある作戦室に入ると、もう、主要メンバーは何人か揃っていた。
 まず、江崎副頭。そして、千宝寺さん。天夢ちゃん。天夢ちゃんが着ている服は、半袖の白いブラウスにリボン。ピンク色のプリーツスカートには、焦げ茶色のチェックが入っている。これは中央区にある私立鼎?女学院(しりつていとじょがくいん)の制服だ。学年ごとにリボンの色が違っているそうで、二年生の天夢ちゃんは青いリボンだ。髪は、ストレートにしている。冥空裏界では、髪型を変えているそうだ。気分の問題かな?


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