七月二十四日月曜日。 この日は、僕は平田古書でアルバイトだ。で、時々だけれど、ここの古書店では面河(おもご)さんが、手伝いに来る。 今日は、面河さんも平田古書で、僕と一緒にバイトしていた。面河さん、中央西区のバーで、バーテンダーもしているそうだ。 正午になったときだった。 「救世。ここは俺がやるから、お前、昼飯、食ってこい」 面河さんがそう言ったんで、僕はご厚意に甘えることにした。で、店員控え室に行こうとしたとき。 「こんにちは。……救世さん」 声がした方を見ると、入り口のところに、制服姿の女子高校生。 天夢ちゃんだった。 「ああ、天夢ちゃん、どうしたの?」 「夏期講習、午前中なので。それで、こちらでアルバイトしてるって聞いてたから、お昼ご飯とか、一緒にどうかなって思って……」 その表情が、ちょっと照れてるように見えたけど、松江さんからああいう話を聞いてると、僕の中にも複雑な感情が生まれざるを得ない。 どうしようかと思ったけど、断ることはできない。だから、僕は、彼女とお昼ご飯を一緒にすることになった。 古書店を出るとき、面河さんが言った。 「救世」 「なんですか、面河さん?」 面河さんは、なんだか「ニヤッ」って感じの笑顔を浮かべた。 「多分、彼女の心を救えるのは、お前だ。だが、これは、強制じゃない」 「天夢ちゃんの心、って……?」 「あの子の心に、今、一番近づけるのは、お前だ。わかるだろ?」 そして、僕の頭をクシャクシャにする。 もしかして、面河さん、天夢ちゃんのお兄さんのこと、知ってるのかな?
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