七月二十三日の午後十一時四十五分、僕は冥空裏界へ行った。 八月二十二日水曜日だった。 いくらなんでも、時間が進みすぎだ。 もしかして、昔から、こうだったんだろうか? あの、八岐大蛇とかに関係あるんじゃ? 時間は、まだ昼前だけど、歩いていると、ちょうど浅黄さんの姿が見えたんで、僕は聞いてみることにした。 浅黄さんは、大正十二年界(こっち)では、役場で出納(すいとう)係なんだという。今は、なんかのお金を銀行に持っていかないとならない、ということで、出てきたんだそうだ。 僕が時間のことを話すと、浅黄さんは事も無げに言った。 「それ、前からあるぜ?」 「……そうなんですか?」 「ああ。もっとも、いつもって訳じゃないけどな。普通は、二、三日、あるいは間隔が空いても、四、五日程度なんだ。だが、時々、異常な進度で日にちが過ぎることがある。俺も、何度か経験してる」 そうか。じゃあ、特別、異常事態、ってわけでもないんだな。 僕は、ふと聞いてみた。 「なんか、法則とか、あるんですかね?」 「さあなあ。俺も考えてみたことがあるが、今ひとつ、わからん。記録なんかを見ても、なんか事件があったようでもないし。もっとも、俺たちが来てないときに、こっちで何か起きてたらわからんが……。これについては、千紗も知らないようだしなあ」 「そうですか」 深く探るようなことでもないかも知れないけど、やっぱり気になるんで、僕は言ってみた。 「白倉さんなら、何か知ってるとか。ほら、あの人、一番長いんでしょ?」 「まあな。新ちゃんは俺より……」 と言いかけて、ふと、表情が固まる。 「? どうかしましたか?」 「え?」 と、浅黄さんが解凍状態になる。そして。 「気のせいかも知れないが……」 と、ちょっと考えてから言った。 「新ちゃん、こっちに誰かを呼んだり、メンバーを揃えたりっていうデタラメなことが出来るだろ? ……気のせいかも知れんが、アイツがそういうデタラメをやった後、こっちの時間の進み方が、狂ってたような気がする」 「……そうなんですか?」 「いつもそうだった、って確証はないが。でも。……うん、この間、こっちにメンバー全員を揃えたのが、顕空の七月十五日だったよな? そのあとの時間進度が、無茶苦茶なことになってるような、そんな気がする」 これについては、浅黄さんが白倉さんに聞いてみるって事だった。 でも、二十七日とか、二十八日がいきなり三十一日になるのとは、関係ないだろうって事だった。そもそも、これまでは、そういうことがなかったそうだ。
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