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作品名:歪で歪んだ物語。 作者:ジン 竜珠

第95回   狼と七匹の子山羊の物語。4
「一人は、ツヴァイハンダーを使う娘、一人は姿は見ていないが、銃器の使い手。そして、おそらくもう一人、……トラップワークのエキスパートがいる」
「何者ですか?」
「わからん」
 と、本当に悔しそうにメッセンジャーは言います。彼としても、組織の看板に泥を塗られたように思っているのでしょう。ですが、取り直したように、男は言いました。
「気をつけて欲しい。以前、ある脱走者を追っている途中だったフレドリカが、抹殺されたことがあった」
「フレドリカが!?」
 ヴォルフリンデにとって、フレドリカは特別な存在です。といっても「友」というのではありません。以前、あるミッションが、偶然にバッティングしてしまい(これについて、当時、ヴォルフリンデは組織の計算ミスだと考えていました)、フレドリカとぶつかったことがあります。その時、てっきりフレドリカの裏をかいて護衛対象の敵・コードネーム「おばあさま」の抹殺に成功したと思ったのですが。
 フレドリカの急襲、さらに彼女の奇策によって乱入した猟師によって、ヴォルフリンデは撤退することになったのです。
 おまけに「おばあさま」も死んではいなかったようで(この時のことは、あとでフレドリカが自慢げに仲間に話しているのを聞きました。曰く「寝台(ベッド)の掛け布団から出ていたのは、本物の顔だけど、体は寝台の下に入っていたから、ヴォルフリンデのバカが、ダガーを突き刺したのは、体に見せかけた、布の塊」)、こちらのミッションは失敗に終わってしまいました。
 あとで噂に聞いたのですが、組織は、ヴォルフリンデの護衛対象と「おばあさま」と、どちらが組織に……いえ、組織のトップにいると思しき、アレッサンドロ枢機卿にとって、有利になるか、両天秤にかけていたようです。
 それはともかく、この時以来、彼女はいつかフレドリカの鼻を明かして、辱めてやろうと思っていたのですが、永久に叶わなくなってしまいました。


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