ヨエルが出て行ってから、三つ四つ、呼吸を数えた頃でしょうか。少女が目を覚ましました。 「気がつかれましたか?」 マリーが声をかけると、少女がこちらを見て、言いました。 「ここに、ゲルダ、カイ、ジェニファー、この三人と、彼女たちと一緒にいるという、四人、合わせて七人の人間がいるでしょう?」 その瞳には、しっかりとした光が宿っています。 「……すみません。仰(おっしゃ)ることがわからないのですけど?」 「とぼけないで? 私、彼女たちがここに逃げ込んだっていう情報を、手に入れてるの。……ねえ、会わせてもらえないかしら?」 黙っていると、少女が起き上がり、伏し目がちに言いました。 「私の名前はヴォルフリンデ。あるところから逃げてきたの」 「あるところ?」 マリーが問うと、ヴォルフリンデが少しためらいがちに言いました。 「……あなたは知らない方がいいと思うわ」 そして、顔を上げ、悲しげな目でマリーを見ます。そして、一呼吸置いて、彼女は言いました。 「逃げる途中で、あるヤツに捕まってしまって、ひどい目に遭わされた。これは、その時の傷」 と、ヴォルフリンデは上着の前を開き、痛々しいアザや、切り傷の跡を見せます。 「特に手は、抵抗を封じるために最初に潰されたわ。物を持つのは問題ないけど、当分の間は、この手で武器とかを振るうのは、難しそう」 まるで、このような状態だから、あなたには危害は加えない、とでも言っているかのようです。なぜわざわざ、そのようなアピールをするのか。マリーがその理由を考えたとき、ヴォルフリンデは頭を下げました。 「お願い! 彼女たちに会わせて! 彼女たちに頼るしか、もう道はないの!!」 すがるような目で彼女は、マリーを見ます。 しばらく置いて、マリーは言いました。 「私の判断では決められません。しばらく待っていただけますか? その前に、その傷も手当てを」 その言葉に、ヴォルフリンデは頷きました。
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