道々、ゲルダとカイは、ジェニファーから事情を聞かされました。組織を離反する決意を固めたジェニファーが、念のためカイの様子を探りに行ったこと、カイが不在だったこと、その留守中になぜか組織の調査員が、頻繁に周辺をうろついていたこと、ここから、カイが何らかの事情で組織にマークされ、行方をくらませていると推測できたこと、しばらくしてゲルダがやってきたこと、ゲルダもカイを捜しているらしいこと、カイの「捜索能力」は組織一ともいわれていること、そのゲルダがストランドへ向かったこと、カイが粛清者に狙われる怖れがあるので、出来れば知られる前に助けて仲間にしようとなったこと。なので、先回りして仲間に知らせ、ストランドの宿屋の主人にお金を握らせて、入れ替わっていたこと、グレーテルが随行するあとを、グレーテルの兄のヘンゼルとジェニファーが、密かに追跡していたこと、粛清者が後をつけていることに気づいたので、身を隠し、さらに気配を消して、ヘンゼルたちが粛清者の後を追尾したこと。 アイソポスの診療所でゲルダの手当を終え、エーケンへ向かう道々、ジェニファーは言いました。 「二人とも、目をつけられた以上、私たちと一緒に来た方がいいッス。ジャックたちは、頼りになるッスよ?」 ジェニファーの言葉に、ゲルダは頷きました。カイからあんな話を聞かされた以上、このまま組織に身を置くのは、強い抵抗があります。それに、自分たちは確実に粛清者に目をつけられてしまいました。 リーダーだというジャックが言いました。 「カイ、でしたね? 君がさっき言っていた、手に入れた、というものを見せてくれませんか?」 さっきまでの話で、この四人……ジャック、ヘンゼル、グレーテル、アンネ……は、組織と戦うどころか潰そうとさえしていることを聞かされました。実際に潰せるかどうかはともかく、彼らに合流した方が、逃げ回るより得かも知れません。 「どうせ組織に目をつけられてしまったなら、戦う方が……」というカイの言葉は、ゲルダの決意とも同じものでした。 カイが提げた首飾りを受け取り、その説明を受けたジャックは、一同に言いました。 「これから、王都へ向かいます。王都に召喚されたストランドバリ候とそのご息女マルグリットのこと気がかりですし、王家を『力』に出来れば、組織と対等に戦うことも出来るでしょう。ですが、その前に寄るところがあります」 そう言って、ジャックは上着から出した、あるモノを示しました。 「先々で、コレが『力』を持つはずです」 そんなことを言いながら、ジャックは不適な笑みを浮かべました。 ゲルダはその笑みに、心強いものを感じました。 一同は、そのまま、エーケンへと向かいました。
(雪の女王の物語。・了)
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