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作品名:歪で歪んだ物語。 作者:ジン 竜珠

第84回   雪の女王の物語。5
 エーケンに到着したゲルダは、少し、カイのことについて調べてみました。しかし、一ヶ月前に出かけてから、誰もその姿を見ていません。
 そこで、ゲルダはカイの家に入り、そこにあるカイの私物を手にダウジングを始めました。このように特定個人を探す場合、その者の私物があると、精度が上がるのです。この国の地図を広げ、徐々に範囲を狭めていくと……。
「ストランドの北にある、山の中腹。……どうして、こんな近くに?」
 逃げるのなら、もっと遠くに行くはず、と思っていたのですが。もしかして、「灯台もと暗し」を狙っているのだろうか、と思ったとき、不意に、
「……ああ、ここ、カイが小さい頃、家族と住んでいたところだ……」
 と、カイから聞かされた話を思い出し、ゲルダは、いたたまれない気持ちになりました。
 もしかしたら、カイは死を覚悟しているのかも知れない。なぜ、彼女がそこまで思い詰めているのか。あるいは、なにか考えがあるのか。
 なんにせよ、居所が分かったので、早速そこへ向かうことにしました。
 カイの家を出たとき、ゲルダは、なにかの気配を感じました。まるで、誰かがすぐ傍にいたようです。辺りを見回しましたが、人々の雑踏に紛れ、痕跡を追うことが出来ませんでした。

 エーケンを出て、北上する途中、ふと気づいたので、エーケンの北にある小さな村の診療所(アイソポスという、異国人が開いている診療所です)で、いくつかの薬を買い求めました。これから行くのは、そんなに標高が高くはないとはいえ、山です。毒草、毒虫の類いもあるでしょう。
 そして、その村を出て、しばらく行くと、山の麓の森に入りました。もう、夕暮れです。急いでここを抜けないと、野営することになります。見た感じ、それほどこの森は深くないようですが、それでも、オオカミなどの肉食獣を警戒するに越したことはありません。この森を抜ければ、ストランドです。宿がなくても、適当なところで雨風がしのげれば。
 そう思って、ゲルダは馬の腹を幾分強めに蹴りました。


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