20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:歪で歪んだ物語。 作者:ジン 竜珠

第82回   雪の女王の物語。3
 ゲルダが得意とする技能は、「人捜し」。しかし、それは普通の技能ではなく、特殊能力と呼べるものでした。
 世に「ダウジング」というものがあります。ペンデュラム(振り子)、あるいはロッドというものを使い、潜在意識、さらには、世界の情報……アカシック・レコードにアクセスして、「何か」を探し、あるいは知るという能力です。
 彼女はそれを使って、調査対象がどこにいるかを探ることが出来るように、組織によって徹底的に訓練されていました。
 ペンデュラムを使って、まずはカイを捜しました。その結果、ストランドの北にいることが分かりました。ストランドの北には、森があり、その先に標高がおよそ一三五ファゾム(約二四〇メートル)の山があって、それを越えると、また森があります。そしてその森を抜けると平原が広がっており、そこにかつて異民族が住んでいたといわれています。その平原を二日ほどかけて抜けると、また山があり、その先が他国領になっていました。
「カイ、なぜだ、なぜ組織を裏切った……?」
 馬の背で、何度目になるかわからない呟きを口にすると、ゲルダは一度、馬を休ませるため、街境にある泉で、馬の背から降りました。
 思えば、カイと出会ったのは、ゲルダが組織に連れてこられて間もない頃。その頃、ゲルダの両親が何者かに惨殺され、街をさまよっている時に組織に拾われたのですが、カイも似たような境遇だったそうです。
 年も近く、そんなことからカイと仲良くなりました。過酷な生活の中、二人は絆を強め、なにかあれば、必ず助け合おうと誓い合っていたのです。
 そして、カイには、胸の中央に特徴的な傷跡がありました。親指大のそれは、まるで雪の結晶のようでした。なんでも「詳しいことは覚えていないが、小さい頃はどこかの平原に住んでいた。そこで怖いことがあり、その時に負った傷の跡」とのことでした。
 ゲルダは、その傷跡を、なぜか美しいと感じていたので、カイのことを「雪の乙女」、時には「雪の女王」と呼び、カイも恥ずかしそうにしながらも、それを受け入れていました。そんな日々の中、二人の絆は固いものとなっていったのです。
 それだけに、カイが組織を裏切って逐電(ちくでん)したということがショックでした。
「なんでだよ……。姿くらますなんて、なんでだよ! 黙って姿消すぐらい、何かを抱えてるんだったら、なんで、オレに相談してくれなかったんだよ!?」
 思わず、右の拳で、地面を殴りつけていました。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 11425