どうにか罠から抜け出し、着地した「シュヴ」は地団駄を踏みました。 「あー、もうーッ!!」 追いかけようにも、彼らがどこへ逃げたか、見当がつきません。もしかしたらストランドバリ候の邸宅かも知れませんが、戻るわけにはいきません。「シュヴ」がブレンバリ候を殺した証拠はどこにもありませんが、あの四人と顔を合わせるわけにはいかないのです。下手をすると、今度は殺し合いになるかも知れませんし、あの四人を相手に勝つ自信は、彼女にはありません。 かといって。 「ヤサに戻るのは、ちょっと……」 最悪の形で任務を失敗したわけですから、粛清は免(まぬか)れません。 少し考え、「シュヴ」は一旦、常駐拠点付近に戻って様子を見て、必要なものをとってから、姿をくらませようと考えました。 そして、四半刻ほど森の中を歩いて、出口が近くなったとき。 「任務を終えたのか?」 声がしました。 どこからするのかわかりませんが、メッセンジャーの声です。 「あ、いや、あの、その……! 今、証拠品が手元になくて……」 どう答えていいか分かりません。 言いよどんでいると、声が言いました。 「そうか。では、もう一度だけ、チャンスをやろう。特例だ」 「いや、その、それは、なんていうか、無理っていうか……」 「無理?」 苦笑いを浮かべて、「シュヴ」は言いました。 「どうも、取り返されっちまったようで……」 「取り返される? どういう意味だ?」 「だからッスねえ……」 どう答えていいやら。 しばらくおいて。 「わかった。ジェニファーくん。君を処分する」 そして、木の陰から、この暗闇でもはっきりとわかる黒い影がにじみ出てきました。 「まさか粛清者(エンフォーサー)……! そうか、あんたが粛清者(アンデルセン)だったッスか……!」 スリムな鎧兜を身に纏った粛清者(エンフォーサー)に対し、「シュヴ」……ジェニファーは拳(こぶし)を構えました。
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