20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:歪で歪んだ物語。 作者:ジン 竜珠

第76回   親指姫の物語。11
 どうにか罠から抜け出し、着地した「シュヴ」は地団駄を踏みました。
「あー、もうーッ!!」
 追いかけようにも、彼らがどこへ逃げたか、見当がつきません。もしかしたらストランドバリ候の邸宅かも知れませんが、戻るわけにはいきません。「シュヴ」がブレンバリ候を殺した証拠はどこにもありませんが、あの四人と顔を合わせるわけにはいかないのです。下手をすると、今度は殺し合いになるかも知れませんし、あの四人を相手に勝つ自信は、彼女にはありません。
 かといって。
「ヤサに戻るのは、ちょっと……」
 最悪の形で任務を失敗したわけですから、粛清は免(まぬか)れません。
 少し考え、「シュヴ」は一旦、常駐拠点付近に戻って様子を見て、必要なものをとってから、姿をくらませようと考えました。
 そして、四半刻ほど森の中を歩いて、出口が近くなったとき。
「任務を終えたのか?」
 声がしました。
 どこからするのかわかりませんが、メッセンジャーの声です。
「あ、いや、あの、その……! 今、証拠品が手元になくて……」
 どう答えていいか分かりません。
 言いよどんでいると、声が言いました。
「そうか。では、もう一度だけ、チャンスをやろう。特例だ」
「いや、その、それは、なんていうか、無理っていうか……」
「無理?」
 苦笑いを浮かべて、「シュヴ」は言いました。
「どうも、取り返されっちまったようで……」
「取り返される? どういう意味だ?」
「だからッスねえ……」
 どう答えていいやら。
 しばらくおいて。
「わかった。ジェニファーくん。君を処分する」
 そして、木の陰から、この暗闇でもはっきりとわかる黒い影がにじみ出てきました。
「まさか粛清者(エンフォーサー)……! そうか、あんたが粛清者(アンデルセン)だったッスか……!」
 スリムな鎧兜を身に纏った粛清者(エンフォーサー)に対し、「シュヴ」……ジェニファーは拳(こぶし)を構えました。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 11389