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作品名:歪で歪んだ物語。 作者:ジン 竜珠

第65回   北風と太陽の物語。5
「よう、お帰り」
 と、森の一角で野営しているヘンゼルが言いました。もう、夕方です。グレーテルが、どこかで調達してきたらしい野菜となにかの肉で、スープを作っていました。
「どうだったの、ラプンツェルの具合は?」
 ジャックの背でラプンツェルが診察の様子を話します。そして、ジャックが言いました。
「ここなら、信用できそうです。ラプンツェルには、ここで、しばらくの間、養生してもらいます。信頼できる人も、見つけましたので」
 ヘンゼルが、大して感傷を抱いていないような表情で「そうか」と応えます。
 ふと。
 ジャックはヘンゼルとグレーテルに問いました。
「君たちは、『人を殺す』、ということについて、どう考えていますか?」
 ヘンゼルが怪訝そうに言いました。
「なんだよ、藪から棒に?」
 それでも、何かを考えて答えました。
「俺たちの目的を邪魔する者は、消す。それだけだろ?」
 グレーテルも答えます。
「わたしたちが消してきたのは、クズばかりだったわ。死んで当然!」
 少し誇らしげな笑みで。
 それを見たジャックは何を思うのか。
 その時、ジャックとラプンツェルが行ったのとは、別の街でマッチ売りをしていたアンネが帰ってきました。
「面白い話を聞いてきました」
 そう言って、四人に言いました。
「ここから北に行って、山を迂回した先に、ストランドっていう辺境があるそうですが。今、そこには、どういうわけか、王都からの貴族や使者が、頻繁(ひんぱん)に赴いているそうです」
 奇妙なものを感じジャックは言いました。
「辺境に、王都からの貴族が頻繁に? 何かの祭とか、重要な祭儀でも、開かれるのですか?」
 アンネは首を横に振ります。
「そこまでは。ただ、そこの領主、ストランドバリ候は、その接待で、大わらわらしいです。その関係で、一時的にメイドや手伝いの者を、市井(しせい)から募っているとか」
 それを聞き、ジャックは考え、みなに言いました。
「うまくすれば、訪れた貴族に、我々のことを印象づけられます。我々も向かいましょう」
 ヘンゼルとグレーテルが頷きます。
 ジャックはラプンツェルに言いました。
「あなたは、ここに残ってください」
「ジャック。……どうか、無事で」
 その言葉に頷くと、ジャックたちはオペレーション・ミーティングを始めました。


(北風と太陽の物語。・了)


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