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作品名:歪で歪んだ物語。 作者:ジン 竜珠

第50回   ハーメルンの笛吹き男の物語。6
 一行は森の中を歩いていました。木々が茂っているせいで、薄暗く、道幅も細くて、おまけに歩きづらく、四人は不平を口にしていました。そんな時、発砲音が立て続けに二つ。その直後、木の上から、何かが降ってきました。
 それは、どうやら腐りかけの獣肉と獣の血のようです。桶のようなものに入れてあったらしく、足もとに転がったそれを見ながら、腐肉と血を被った二人の衛士は口々に文句を言っています。その直後でした。
 何かが風を切るような唸る音がしたかと思うと、何かがこちらに近づくのが見えました。
 狼でした。それも、一目見て、「飢えている」とわかります。そして、その足には縄があって、その先が切れているようです。もしかしたら、さっきの風を切る音は、この狼を繋いでいた縄を切る、刃(やいば)のうなりだったのでは?
 徴税官がそう思ったとき、狼がこちらに駆けてきました。狙うのはもちろん……。
 それに気づいたとき、徴税官は駆けだしていました。背中で、二人の男の悲鳴を聞きながら。

 這這(ほうほう)の体(てい)で森を抜けると、そこはちょっとした平原でした。その先にも林のようなものがありますが、その先に、街の市壁が見えます。安堵の思いで徴税官と護衛隊長は走ります。しかし、二人の、二十五ジャーマンエルほど先で、一人の少年が立ちはだかっていました。
 年の頃は、十六ほどでしょうか。手には、やたらと大きな……否、巨大な拳銃があります。
「どけぇ、小僧!!」
 護衛隊長が腰の剣を抜き、振り仰いで、少年に向かいます。少年は黙って、拳銃を構え、引き金を引きました。銃口からは、もはや小さな太陽と言いたくなるほどの火の塊が吐き出され、護衛隊長の頭を撃ち抜きました。
 声もなく、護衛隊長は倒れ、動かなくなりました。少年が皮肉めいた笑みを浮かべて言いました。
「やっぱ、M五〇〇は、デカくて音が大きいばかりで、いただけねえなあ。ロマンがねえや」
 そして、徴税官を見ます。自分でも何を言っているかわからない悲鳴を上げて、徴税官は辺りを見て、咄嗟に右の方へ走りました。背後と左は森、前には、銃を持った少年。右に行くしかなかったのです。
 ちょっと走ると、やはり二十五ジャーマンエルほど先に一人の少女。年の頃は十四といったところでしょうか。
 少女は手にツヴァイハンダーを持っています。右手で柄を持ち、刃を地に平行に構え、左手の平で刃を支えています。
 徴税官は剣を抜き、構えました。この間合いなら、自分の方が早い。そう思い、徴税官は剣を頭上に構えます。
 しかし、気がつくと、少女が目の前に来ていました。まるで、瞬間移動のようです。何が起きたか、まるでわかりません。
 少女が踏み出した右脚を軸にして、大剣で空間を薙ぎました。そこで、徴税官の意識が消失しました。


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