その朝。 徴税官の一行はハーメルンへと通じる石橋へと来ました。 一行の人数は護衛隊長も含め、十人ほど。みな、半年前にもハーメルンに来て、「美味しい思い」をしたものばかりです。 一同は馬に乗り、先頭の者が長さ五百ジャーマンエル(約二百メートル)の橋を、三分の二ほど過ぎた時です。轟音とともに、何かが風を切って、飛んできました。そして、その「何か」が石橋に命中した途端。 その部分が崩れました。馬に乗ったまま、なすすべもなく、二人ほどが、馬ごと、河へ落下します。さらに、轟音。見ると、黒い鉄球らしいものが飛んできます。その鉄球が、また石橋に命中すると、橋が崩れるのです。 「なんだ、何が起きた!?」 徴税官が慌てふためいて、そんなことを言うと、護衛隊長が言いました。 「あの鉄球は、恐るべき正確さで、この石橋の要石(キーストーン)と、その周辺を砕いています!」 また鉄球が飛んできて、橋が崩れました。 高さは十ジャーマンエルほどですが、河底には、尖った方を天に向けた木の杭が立ててあり、ある者は腹を、ある者は胸を貫かれて、息絶えていました。 結局、来た道を戻り、なんとか助かった者は、四人だけでした。
「徴税官、ここはいったん、戻りましょう」 護衛隊長が言いましたが、徴税官は、納得がいきません。 コケにされて、黙っていられるか! 言葉にこそしませんが、そんな怒気が口をついて出ました。 「なんとしても、ハーメルンへ行き、王家にたてつく者どもに、目にものを見せるのだ! それが、国王陛下、王家の皆様への、忠心の証(あかし)ぞ!」 あとの二人も、頷きます。護衛隊長は、最初は反対していましたが、ふと、河に転落し、串刺しになった部下の骸(むくろ)を見るうち、怒りに駆られたようです。 「わかりました。……下民(げみん)の分際で! 我らに逆らったらどうなるか、思い知らせてやる!」 そこで一行は、別の橋を渡ることにしましたが、その橋は、ハーメルンの隣街にあり、しかも途中に森があります。馬を置いて行くことになりますが、馬はその隣街で調達すればいい。
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