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作品名:歪で歪んだ物語。 作者:ジン 竜珠

第44回   ラプンツェルの物語。10
 少年はモーゼルkar九八kを手に持ち、腰にブラックホークを提げています。少女はツヴァイハンダーとフレドリカの頭部(くび)を提げています。
「終わったぜ」
 少年がそう言うと、少女が頭部を地に放り捨てます。
「ご苦労様でした」
 ツヴァイハンダーを持った少女が言いました。
「ねえ、これから、どこ行くの? ここ、知られちゃったんでしょ、組織に」
「そうですね。……この先に、ハーメルンという街があります。少し様子を見て、大丈夫なようなら、そこにラプンツェルを託しましょう。それまでは、また不自由をかけますが、野宿をしてくれますか?」
 青年の表情は、本当に彼女を心配しています。そのことに、再び幸せなものを感じながら、ラプンツェルは頷きました。
「言ったわよ、気にしないで、って」
 頷く青年に、ライフルを持った少年が言いました。
「なあ、俺たち、いい加減『お尋ね者』になってんぞ? この間の街じゃあ、衛兵詰め所に俺たちの手配書があったおかげで、宿、逃げ出すハメになったし。なんで、本名で、そんで、いつも同じ名前で投宿すんの?」
「目をつけられるため、に決まってるじゃないですか」
 笑顔を浮かべた青年に、少年と少女は溜息をつきます。
「それに、『切り札』は、こちらにあるんですよ?」
 そう言って、青年はラプンツェルを見ます。
 ラプンツェルは頷き、少年と少女を見ました。
「『アレ』を使ったからと言って、組織を潰せるわけじゃない。でも、ダメージを与えることは出来る。あなたたちも、組織と戦いたいんでしょ?」
 二人が頷きます。
 青年が言いました。
「じゃあ、僕たちのすることは決まっていますよね?」
 少女が答えました。
「組織と戦いうる、強大な権力に接近すること、ね?」
「わかってるじゃないですか。じゃあ、行きましょうか」
 青年はラプンツェルを抱え、立ち上がります。
 彼の首に腕を回し、ラプンツェルはしっかりとジャックにしがみつきました。
 このぬくもり、失いたくない。
 そう思いながら。


(「ラプンツェルの物語。・了)


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