「彼らに任せておけば、大丈夫ですよ、ラプンツェル」 「そうね。あなた同様、このわたしが仕込んだんだもの」 小屋の裏手で、身を横たえたラプンツェルは、一人の青年の胸に頭をあずけていました。 「ねえ。本当に組織と戦うの?」 ラプンツェルは青年を見上げます。青年は眼鏡のブリッジを指で押し上げながら答えました。 「そうしないと、あなたは……僕たちは永遠に逃亡生活です。二人して、お日様の下で幸せな暮らしがしたいじゃないですか」 笑顔でした。その笑みに幸せを感じながら、ラプンツェルは言いました。 「組織と戦うとなると、いすれ、粛清者(エンフォーサー)とも戦うことになる」 「三年前、あなたを滝壺へと落とした、あいつ、ですね?」 青年の表情が険しくなります。 頷いて、ラプンツェルは続けました。 「ヤツに触れられてはいけないわ」 「? なぜですか?」 「ヤツが着ている、薄い鎧には、電気が流れているの」 「電気?」 「ええ。わたしがそれに気づけたのは、本当に幸運だった。ヤツに肩を掴まれたとき、その痛みで体が動かなくなった。でも、その時に、偶然、わたしの金属製の得物(ワイヤー)がヤツの腕に絡まった。一瞬、放電(ショート)が起きたわ。体が動かなかったのは、一種の感電痛。ヤツがうろたえた隙に、わたしはヤツの腕をふりほどいて、滝壺へダイブした」 青年が目を伏せます。 「僕がもっと早く、あなたのもとへ駆けつけていれば」 「いいのよ。あなたも共倒れになったと思うから。粛清者(グリム)は、それほどの難敵」 「でも、その時の傷が元で、あなたは……」 心配げな表情を浮かべている青年の頬を、手でさすりながら、ラプンツェルは微笑みました。 「気にしないで?」 その時、森の奥から、少年と少女が帰ってきました。
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