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作品名:歪で歪んだ物語。 作者:ジン 竜珠

第41回   ラプンツェルの物語。7
 しかし、なにかの気配を感じ、フレドリカは、地を転がります。先刻までフレドリカがいたところに、ツヴァイハンダーが突き立てられました。
「そういえば、『その人たち』……だったわね!」
 片膝立ちになり、乱入者に向けて、フレドリカは引き金を引きましたが、乱入者は大剣を盾にして、弾丸を弾きます。
 見ると、十四歳ぐらいでしょうか、自分と同い年ぐらいの少女です。それに、美しく、凜とした空気を持っていました。ですが、見入っている暇(いとま)はありません。フレドリカは、再び少女に向けて引き金を引きます。そして、少女は、またその弾丸を弾(はじ)きました。どうやら、銃口を向けた瞬間に、弾道を見極め、弾(たま)を跳ね返しているようです。異常な動体視力と反応速度と言わざるを得ません。
 ならば、それを逆手に取れば。しかし、少女は体勢を半身(はんみ)に変え、その体は地に突き立てた大剣の幅に収まっていました。おそらくフレドリカが銃口を揺らしたことから、その心理を見抜かれたに違いありません。
 どうにか回り込もうとしたとき、少女が大剣を抜き、突きかかってきました。最低限のモーションです。その切っ先は、危うくフレドリカの喉を貫くところでした。
 後転し、舌打ちをして、フレドリカは少女の周辺の木々に、三発ほど撃ち込んで気を逸らせ、その隙に、身をかがめて走り去ります。その時、足首に何かが引っかかるような感触があると同時に、カラカラと金属のすり合う音がしました。また「糸」を使ったブービートラップにかかったと思った瞬間、銃弾が頭の上を駆けて行きました。その弾丸はフレドリカにかすりもしませんでしたが、樹上の「何か」に当たったらしく、上から大量の何かが降ってきました。
「これは……。水?」
 一瞬、血かと思ったのですが、ただの水だったようです。なぜ樹上から大量の水が降ってきたのか、理解できません。ふと上を見ると、なにかの皮きれがぶら下がっています。どうやら皮袋(かわぶくろ)に水が入っていて、口を縛っていた紐が銃弾で破られ、中に入っていた水が浴びせられたようです。
 どんな水か、わかりません。万が一、毒物だった時のことを考えて、フレドリカは入念に口元や顔を袖でぬぐいます。その時、ちょっとだけ舐めてしまいましたが、これぐらいなら問題はないでしょう。しょっぱかったので、塩水だったようです。
 そして、木々がうっそうと茂っているエリアへと走って行きました。足もとに用心し、トラップを避けながら。


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