20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:歪で歪んだ物語。 作者:ジン 竜珠

第40回   ラプンツェルの物語。6
 フレドリカは、血に染まった赤ずきんを脱ぎ捨て、小屋を出ました。このまま、帰投するわけにはいきません。ラプンツェルとその仲間をとらえ、「お宝」を手に入れないとならないのです。
「標的(マルタイ)が死んだとき、組織は、治安維持の衛兵に紛(まぎ)れこんで、徹底的に、その屋敷を捜索したという。にもかかわらず、『お宝』は見つからなかった。だとすると、潜入調査していたラプンツェルが見つけて、持ち逃げした、と考えるのが妥当」
 そして、辺りを探りながら、フレドリカは思索を進めます。
 標的を死なせたとはいえ、「お宝」を手に入れたのなら、ラプンツェルは逃げ回る必要は、ないはず。二日前にも「『お仕事』がうまくいったら、『いい暮らし』が出来ると思った」と言っていましたから、その「お宝」を手に入れれば、標的を死なせても、報償は得られるはずなのです。
 では、なぜ、彼女は逃げ回っているのか?
 可能性はいくつか考えられます。
 ラプンツェルは「お宝」は手に入れていない。ならば、自らの「情」に流されたばかりに仕事に失敗した、ということで、粛清を恐れ、彼女が逃げ回っていることにも納得がいきます。
 あるいは、その「お宝」について、ラプンツェルは組織に提出するよりも、もっと旨みのある方法を見つけた。これでも、ラプンツェルが逃げ回る理由になります。
「だいたい、なんなのかしらね、『お宝』って?」
 詳しいことは、フレドリカは聞かされていません。ただ「ラプンツェルの持つ『お宝』を奪取し、彼女を始末すること。もし、事情を知るものがいたら、そのものも、始末せよ」とだけ、命じられているのです。
 そして、組織が情報網を使って、この森でそれらしい女を見た、という、猟師の情報をもとに、フレドリカがやってきたのです。
 一瞬、「もしラプンツェルが、本当に『お宝』を持っていて、彼女と手を組めたら、自分も組織にいるよりも、いい暮らしが出来るかも知れない」とは思いましたが。
「バレたら、粛清者(グリム)に始末(け)されるのがオチね」
 そこまで考えたとき、銃声が轟いて、フレドリカのすぐ傍を、何かが高速で走って行きました。
 狙撃!
 フレドリカは、木々が乱立する中に走り込み、近くの木の根元に身を伏せ、辺りを窺います。しかし、次なる狙撃はありません。用心深く、身を起こすと、再び、弾丸が駆け抜けていきました。この一撃で、フレドリカは、狙撃者がいる方向を見極め、地を這って、そこを狙える位置へと移動します。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 11377