「シーツの下に、圧力解放式地雷を仕込んだのね?」 通常、地雷は踏むと、その圧力によって、爆発します。これがオーソドックスなものですが、まれに踏まれた圧力が解放されたのを感知して爆発するようにセッティングされたものもあります。隊列を組んだ一団の先頭、あるいは密集陣形を組んだ一団の誰かが踏めば、そのチームの中で爆発が起こり、広くダメージを与えることが出来ます。 アルフリーダも、この地雷の感触は、体で覚えましたし、解除法もレクチャーされています。しかしその解除法は、立位(りつい)……普通の姿勢の時であり、このように大の字に寝転んだ時のものではありません。 「まあ、いいさ。生きてるんなら、いろいろと聞かせてもらおうか、あんたの素性と、目的を!」 口元は笑っていますが、目は笑っていません。王妃の詰問に、アルフリーダは沈黙してにらみ据えるのみです。 「……いい目だ。じゃあ、体に聞こうかねえ。この城には、いろいろと餓(う)えた野獣(おとこ)どもが、大勢いることだし」 そんな辱めを受けるぐらいなら。 「あたしがここで体を起こせば、その爆発で、あなたも無事では済まないけど?」 捨て身の脅迫です。ですが。 「クックックックッ。その地雷は、モンロー・ノイマン効果で、お前にだけ、爆発力が収束するようになっているのさ」 簡単に言うと、すり鉢の底に爆発力が集まって、そこから一点に向けて力が集中するように、細工されている、ということです。 「その天蓋もカーテンも、金属が編み込んである。ちょっとやそっとじゃ、傷すらつかないんだよ? なんなら、試すんだね。まあ、こっちは、お前が爆(は)ぜても、一向に構わないし、またネズミが来ても、処分すればいいし。はじけ飛んだお前の肉は、猛獣のエサとして高く売れるし、それに。……知ってるかい?」 そして、王妃が人間のものとは思えぬ、凄まじい笑みを浮かべます。 「若い娘の肉は、悪魔召喚の材料にも使えるんだそうだよ?」 「……キサマらを裁くのは、世俗(せぞく)法じゃないようね……!」 王妃が、嘲笑します。 こうなれば。 アルフリーダは両膝を立て、両腕のバネをも利かせて、王妃と反対の方へ跳びました。直後、轟音とともに背中が焼けるのを感じました。 床にバウンドし、その勢いを使って窓の下まで転がると、アルフリーダは片膝立ちになります。 呼吸が乱れ、気が遠くなりましたが、それでも、皮肉なことに背中の痛みこそが、アルフリーダの意識を、こちら側につなぎ止めます。 王妃が驚愕の表情で言いました。 「ど、どうして、無事で……!?」
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