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作品名:歪で歪んだ物語。 作者:ジン 竜珠

第3回   マッチ売りの少女の物語。前編
 昔々、あるところに、一人の少女が意地悪な父親と二人で暮らしていました。
 ある年の大晦日、父親は言いました。
「このマッチを売ってくるんだ! 全部売るまで、家に帰ってくるんじゃないぞ!」
 そして、少女は、マッチを売りに雪の降りしきる中、街へと出て行きました。
 しかし、寒いので、人通りも少なく、マッチは、なかなか売れません。
 そのうち、夜になりました。手が、かじかんできた少女は、一本だけなら、とマッチを点灯しました。
 しかし、その火はあまりに弱々しく、またすぐに消えてしまいます。
 そこで今度は、二本、一度に点灯しました。それでもその火は、少女の手はおろか、指さえ温めることはできません。
 今度は、三本、火を付けました。少しだけ長く燃えましたが、それでも少女を暖めることはできないのです。
 そのうち、少女は哀しくなってきました。今の自分には、このマッチの火でさえ、ぬくもりを与えてくれない。そう考えると、涙が溢れて止まりませんでした。
 その時、少女の耳に、懐かしく、そして温かい声が聞こえてきました。少女の名を呼ぶその声は、間違いなく、死んだおばあさん。おばあさんは、少女に、とても優しくしてくれたのです。
 おばあさんは言いました。
『よく、お聞き。お前の力を信じるんだよ。お前には、秘められた能力(ちから)があるんだ』
 その言葉に、少女は、マッチを十本以上、束ね、念じました。そして。
「燃えろ!」
 その声を発した途端、その束が、まるで松明(たいまつ)のような炎を宿したのです!
 驚いていると、おばあさんが言いました。
『私にも、その能力(ちから)があるんだ。でも、それを恐れた「組織」との戦いに敗れて、命を落とした。いいかい? 奴らに世界を渡しちゃいけない。戦うんだ! ……お父さんに、気をつけるんだよ』
「お父さん? どうして?」
 少女の問いに、おばあさんの声が、少しためらってから、答えました。
『あの男は、「組織」の幹部なんだ』
 その時、お父さんがやって来ました。


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