城内の大広間に招き入れられた娘を見ながら、王妃は言いました。 「これはこれは、フロイライン・マルグリット。しばらく見ぬ間に、すっかりと美しい淑女(レディー)になられたようですねえ。……この嵐のおかげで、身に染みついた田舎臭さも、洗い流されておりますようで」 「……恐れ入ります」 娘がお辞儀します。 「母上」と、王子がやってきました。そして。 「これが、ストランドバリ候の……」 王子がしげしげと娘を見つめます。その瞳には、明らかに娘への、なみなみならぬ興味がありました。 「王子。この娘のことは、私がしっかりと、『確かめて』あげます」 「確かめる、とは?」 王子が訝しげな表情になります。無理もありません。こんな夜に訪れたとはいえ、王家が下賜した髪飾りを持っている以上、この娘は貴族の者。それに、王妃の目から見ても、この娘の器量は、充分、王族の者として恥ずかしくないものです。 ちょっとだけ笑い、王妃は王子にだけ聞こえる音量で言いました。 「この者が『本物の姫』かどうか、確かめるのです」 「『本物の姫』?」 王子が首を傾げます。 「ええ。いずれはこの国の王妃になるのです。『本物の姫』でなければなりません。私にお任せなさいな」 「わかりました、母上。母上のなさることは、いつも正しい。ですが、どのようにして確かめるのですか?」 王子の疑問に、王妃は、やはり王子にだけ聞こえる音量で言いました。 「ベッドのシーツの下に『あるもの』を仕込むのです。それで『本物の姫』かどうか、わかります」 そう言って、娘を見ます。 心中(しんちゅう)、「この娘は、『姫』ではない」と、確信しつつ。
|
|