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作品名:歪で歪んだ物語。 作者:ジン 竜珠

第23回   エンドウ豆の上に寝たお姫様の物語。3
 城内の大広間に招き入れられた娘を見ながら、王妃は言いました。
「これはこれは、フロイライン・マルグリット。しばらく見ぬ間に、すっかりと美しい淑女(レディー)になられたようですねえ。……この嵐のおかげで、身に染みついた田舎臭さも、洗い流されておりますようで」
「……恐れ入ります」
 娘がお辞儀します。
「母上」と、王子がやってきました。そして。
「これが、ストランドバリ候の……」
 王子がしげしげと娘を見つめます。その瞳には、明らかに娘への、なみなみならぬ興味がありました。
「王子。この娘のことは、私がしっかりと、『確かめて』あげます」
「確かめる、とは?」
 王子が訝しげな表情になります。無理もありません。こんな夜に訪れたとはいえ、王家が下賜した髪飾りを持っている以上、この娘は貴族の者。それに、王妃の目から見ても、この娘の器量は、充分、王族の者として恥ずかしくないものです。
 ちょっとだけ笑い、王妃は王子にだけ聞こえる音量で言いました。
「この者が『本物の姫』かどうか、確かめるのです」
「『本物の姫』?」
 王子が首を傾げます。
「ええ。いずれはこの国の王妃になるのです。『本物の姫』でなければなりません。私にお任せなさいな」
「わかりました、母上。母上のなさることは、いつも正しい。ですが、どのようにして確かめるのですか?」
 王子の疑問に、王妃は、やはり王子にだけ聞こえる音量で言いました。
「ベッドのシーツの下に『あるもの』を仕込むのです。それで『本物の姫』かどうか、わかります」
 そう言って、娘を見ます。
 心中(しんちゅう)、「この娘は、『姫』ではない」と、確信しつつ。


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