牢へ連れて行かれる途中のこと。 「ねえ、ちょっとお便所に行かせてもらえない?」 三人の衛兵がみな、顔をしかめます。ですが、三人はうなずき合って、その方へ行きます。そして。 「用を足す間、あっちを向いてて?」 恥じらってみせると、三人がせき払いをして、背を向けます。 エレオノーラは器用に後ろ手をお尻に這わせ、スカートの後ろをまくり、そして……。 女の子が持っている、身体の秘密のポケットから、小瓶を取り出しました。そして、しゃがみ込み、両足の間から腕を通して、小瓶を前方に出します。口でフタを開け、それをくわえ、上を向きました。小瓶の中の液体が、口に入ります。すぐに、口の中や舌を、無数の金属製の針が突き刺すような、不快な刺激があったかと思うと、しばらくおいて、中に入っていた液体が胃酸と反応してガスが発生します。 そして……。 呼吸が苦しくなりました。いえ、呼吸が出来なくなりました。 辱めを受けるぐらいなら。 それが、エレオノーラの、最後の思考でした。
「そうかい、自決したかい。アソコに毒を隠し持ってたんだねえ。よく身体検査しとくんだったよ」 王妃がそう言うと、侍従長が言いました。 「亡骸は、いかが致しますか?」 「そうさねえ。この間のパーティーで、やって来た楽士の娘は、爆死した。ついでだから、そのままさばいて、猛獣のエサ用に、街の肉屋に卸したけど。……そうだねえ、そいつも、同じ目に遭わせておやり」 「御意」 侍従長が一礼するのを見ながら、王妃は「何者が動いているのか、確認せねばならないかも」と思っていました。
(裸の王様の物語。・了)
|
|