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作品名:歪で歪んだ物語。 作者:ジン 竜珠

第20回   裸の王様の物語。9
 牢へ連れて行かれる途中のこと。
「ねえ、ちょっとお便所に行かせてもらえない?」
 三人の衛兵がみな、顔をしかめます。ですが、三人はうなずき合って、その方へ行きます。そして。
「用を足す間、あっちを向いてて?」
 恥じらってみせると、三人がせき払いをして、背を向けます。
 エレオノーラは器用に後ろ手をお尻に這わせ、スカートの後ろをまくり、そして……。
 女の子が持っている、身体の秘密のポケットから、小瓶を取り出しました。そして、しゃがみ込み、両足の間から腕を通して、小瓶を前方に出します。口でフタを開け、それをくわえ、上を向きました。小瓶の中の液体が、口に入ります。すぐに、口の中や舌を、無数の金属製の針が突き刺すような、不快な刺激があったかと思うと、しばらくおいて、中に入っていた液体が胃酸と反応してガスが発生します。
 そして……。
 呼吸が苦しくなりました。いえ、呼吸が出来なくなりました。
 辱めを受けるぐらいなら。
 それが、エレオノーラの、最後の思考でした。

「そうかい、自決したかい。アソコに毒を隠し持ってたんだねえ。よく身体検査しとくんだったよ」
 王妃がそう言うと、侍従長が言いました。
「亡骸は、いかが致しますか?」
「そうさねえ。この間のパーティーで、やって来た楽士の娘は、爆死した。ついでだから、そのままさばいて、猛獣のエサ用に、街の肉屋に卸したけど。……そうだねえ、そいつも、同じ目に遭わせておやり」
「御意」
 侍従長が一礼するのを見ながら、王妃は「何者が動いているのか、確認せねばならないかも」と思っていました。


(裸の王様の物語。・了)


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