その時です! 「誰だ!?」 扉のところから声がしました。 「やべ、誰か来た!」 エレオノーラはランプの灯を吹き消し、近くの書架の影に身を隠します。入ってきたのは、二人の衛兵。どうやら、見まわりのようです。 「おかしいな、確かにランプの明かりらしきものが見えたんだが?」 「ああ、俺も見た」 二人が何か言いながら、倉庫に入ってきます。エレオノーラは剣と古書を手に、二人の背後に回り込みます。そして、外に出たときです。 「なんだ、キサマ!?」 その声に驚いて振り向くと、そこにはまた二人の衛兵。どういうことでしょう、王城だから、警備が厳重ということでしょうか? しかし、どうもこの倉庫周辺に偏っているような気もします。ですが、そんな詮索は後回し。今はこの場を……。 「いえ、あの、ちょっと迷ってしまって……!」 自分でも苦しい言い訳とは思いましたが、仕方ありません。ですが。 「ん? キサマが手にしている物……。そうか、キサマ、この前の侍女や楽士の仲間か!?」 侍女? 楽士? 訳がわかりません。ひょっとしたら、シンデレラの他にも潜入していた者がいたのかも知れません。 やむを得ません、エレオノーラは懐から得物……ジュルという名の武器を取り出します。これは手に握って使うもので、拳の先に二本の突起が伸びています。 身を翻し、エレオノーラは目の前にいる一人目の衛兵の、頸動脈めがけて、ジュルの突起を突き刺します。すぐさま抜き放ち、身をひねって、もう一人の頸動脈に刺しました。 抜き放つと、少しのタイムラグを置いて、二人の喉から、鮮血がほとばしります。この衛兵たちの声を聞き、倉庫から、先刻の衛兵たちが飛び出てきました。一瞬で状況を見てとった二人が剣を抜きます。しかし、エレオノーラはその懐に飛び込み、まず一人目の頸動脈を刺します。そして、もう一人を狙いましたが、剣に阻まれました。 ステップを踏んで身をひねり、回し蹴りを放ちますが、それも剣で阻まれます。なかなか身のこなしのいい衛兵です。ですが。 「足もとがお留守よ」 そう呟いて、エレオノーラは身を沈め、相手のアキレス腱の辺りを刈り込むように、大きく脚を回して、蹴りを放ちます。バランスを崩して、倒れかかる衛兵の胸に突起を撃ち込みますが、せめてもの抵抗なのか、相手がエレオノーラの右手を、両手で力を込めて掴みました。 血を吐きながら、衛兵がニヤリとし、そのまま絶命しました。 その手をふりほどこうとしていると、新手が現れました。明らかにこの周辺の警備に、人員を割いているのが分かります。となると、やはり……。 「こいつは、マジってことか……」 左手にある古書と、短剣を見ました。
|
|