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作品名:歪で歪んだ物語。 作者:ジン 竜珠

第17回   裸の王様の物語。6
 探索は思いの外、難航しています。そもそも「王家の不正」がなんなのか、教えてもらっていないのです。なので、証拠といったって、何を捜せばいいのか、見当さえつけられません。
「結局、組織も王家が何らかの不正をやらかしているってことは掴んでいるけど、それが何か、までは把握してないってこと。にもかかわらず、『証拠を掴め』ってことは、何かを急いでるってわけか」
 倉庫で、古びた短剣を見ながら、思いました。
「あるいは。組織のトップの『立場』に、何らかの変化が及びそうだから、急ぐ必要がある、とか……」
 エレオノーラは組織のエージェントの中では、最古参の部類に入ります。もっと言えば、組織が今の形になるよりも前から、エージェントとして暗躍しています。だから、組織のトップが何者であるか知っていますし、数年前から組織のトップが何を考えているのかも、漠然とですが理解できていると思っています。なので。
「……まあ、いいけどね」
 自分を納得させました。
 剣を収め、次の物を見ます。それは分厚い古書でした。はっきり言って、古語で書いてあるため、何が何やら分かりません。どうやら、この国が建国される前に存在した帝国の、さらにその前に存在した共和国時代の文献のようです。
「うわあ……。こりゃ、もはや暗号文書だわねえ」
 パラパラとめくりますが、そもそも見たこともない文字なので、「読む」以前の問題でした。ですが、本の中ほどに達したとき。
「……これは……!」
 ある「図形」が描いてあります。それには絵がついていて、さらに紋章らしきもの。そして、先ほど手に取っていた短剣をもう一度とり、鞘から抜きます。ランプの光に近づけると、剣身になにかの記号らしきものが刻んであるのが見えました。
「これって、もしかして……!」
 ある推論が徐々に形になっていきます。
「……そうか、王家のやらかしている不正って、これのことかも……!」
 ですが、確信ではありません。そもそも、ここは倉庫です。ただ単に、接収した財産を保管しているだけということも、考えられます。なので。
 さらに周辺を探しました。その時、あることに気づきました。
「……この手の資料だけが、一ヶ所に集めてあるな。カテゴリ別にまとめてあるだけか、それとも……」


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