20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:歪で歪んだ物語。 作者:ジン 竜珠

最終回   それからの物語。(完結)
 王妃は教皇庁の預かりとなり、裁判にかけられたあと、王都で、公開の火刑ということになりました。また、処分されたのは、実際に悪魔召喚の儀に携わっていた臣下、貴族に限られ、王子については、不問とされました。結果、王家は存続することになったのです。
 国王は、王妃の裁判が行われている間に、崩御しました。典範により、結婚していない王子は王位に就くことができず、摂政を置くことになりましたが、王子の希望で、摂政にはストランドバリ候ヨアキム、ヴェストフェルト公クレメンスの両名が就くことになりました。
 ヨアキムが真っ先に行ったのは、北方の荒れ地で苦しめられていた、旧帝国の子孫たちの解放。彼らには、市民権が与えられ、これからの政治に関与できることになったのです。
 ちなみに、王子のお后として、マルグリットが選ばれたらしいですよ?

 組織壊滅後。
 各地に散らばっていたエージェントや調査員たち、組織の「卒業者」たち(中には、爵位を買っていた者さえいました)は捕縛されましたが、その処分については、なかなか決まらず、結局、何人かは王家専用の間諜(スパイ)として雇う、という方向で話がまとまりそうです。もちろん、このことは、というか、エージェントたちの存在、そもそも組織のこと自体が、国民には伏せられているのですけれどね。

 カイは。
 その能力を買われ、王家で事態収拾の実務処理を任されています。なお、彼女はその後も文官として使われることが決まっているそうです。

 ゲルダは。
 修道女となり、身寄りのいない子どもたちの世話をしているそうです。適格な里親を探す彼女の能力は、一部で「神の御業(みわざ)」と呼ばれているとか。

 ジェニファーは。
 エーケンダール伯に細工師として、正式に雇われました。彼女の細工物は高値で取引され、エーケンの財政を潤しているそうですが、時折、公(おおやけ)に出来ない物も作っているとか、いないとか。

 ヘンゼル、グレーテル、アンネについては、その消息は定かではありません。ただ、裏の世界で「依頼を受けて悪人を密かに抹殺する三人組」がいる、という噂があります。たまたま目撃した者の話では、一人は銃器使い、一人は大剣使い、一人は火炎使いだとか。

 ジャックとラプンツェルの行方については、杳(よう)として知れません。ただ、アイソポスという、異国人が開いている診療所で、こんなやりとりがあったそうです。
「ジャック。わたしたちは、決して日の当たる道を歩いてはいけないの。それだけのことをしてきたのだから。だから、どこか、遠くの、人があまりいないところで、静かに暮らしましょ? わたし、あなたといられるなら、それだけで幸せ。これがわたしの、本当の想い」
 その後、彼らの姿は消えたのです。この国のどこかで、名を変え、ひっそり暮らしているとも、この国を出たとも、もう、この世にはいないのだとも、いろいろといわれていて、はっきりしません。

 ただ。
 一ヶ月に一度、カイ、ゲルダ、ジェニファーに、どこからか手紙が届くそうです。その手紙を読むときの三人は、とても幸せそうな表情になっているとか。また、三人に手紙が届いている頃は、裏の世界での「悪人裁き」も行われていないようです。

 この手紙の差出人、あなたには、わかりますよね?


(歪で歪んだ物語。・了)


あとがき
 読了いただいた皆様、有り難うございました。最初は、おちゃらけたお話だったんです。無理矢理、一つに繋げたので、ノリや雰囲気がところどころ違っているのは、ご愛敬(笑)。
 これにて、ジャックたちの「物語。」、終了でございます。
 おつきあいいただきまして、誠に有り難うございました。

 補足。
 ヴァレリアーノの「メダル」と「リスト」は、別の視点に気づいて、王城ではなく、大教区大教会に潜入したエージェントが、入手したことになっています。


 参考までに、本作における世界観を少し。

・公爵……○○フェルト。王家の親族・姻族。
・侯爵……○○バリ。建国時に特に大きな功績があった者の子孫。
・伯爵……○○ダール、○○クランツ。建国時に功績があった者の子孫が、○○ダール、金で爵位を買った者が○○クランツ。○○クランツは所領を持たず、名誉のみ。
 子爵、男爵は存在せず。

 この国は「都市、街、町、村、コミューン」によって構成されています。「都市」は、公侯伯による自治領。自治領主を補佐するために、王都から執政官・警備隊などの行政組織、および司法組織が派遣され、置かれています。「街」は、近隣の「都市」の自治権の支配下にあります。人口は、千人〜三千人前後のところが、ほとんど。行政組織等はなく、執政官から権限を委任された執政参与がいます。町以下は、「都市」の自治権の支配下にあって、行政権等は持たず。ただし、「都市」の支配下にない町以下の方が多いぐらいで、そういうところは「町長(まちおさ)」「村長(むらおさ)」によって、治められています。こういうところは、「都市」ひいては「国家」に税を納めない代わりに、商売や交易などである種の「協定」がなく、不利になることもありますし、法的保護を受けていないので、自分たちの身は自分たちで守らねばならず、自警団を組織しているところもあります。

 説明するの、忘れてました。申し訳ない(苦笑)。この世界での「枢機卿」には、教皇選出権だけでなく、罷免権もあります。


← 前の回  ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 11412