王妃の表情が強ばります。そして、何を思ったか、踵を返し、玉座へと向かいましたが、突然、玉座が噴き飛び、そこから武装した甲冑姿の騎士がわらわらと沸いてきました。 大笑いして、カールが言いました。 「王妃さん、あんた、敵、作りすぎたわ! 俺だけじゃねえ、リュードバリ候や、ヴェステルダール伯、ヴェストフェルト公すら、あんたに意趣返ししたいってさ。今、この城の周りは、諸侯の軍勢が、グルリって取り囲んでるぜ?」 そして、愉快そうに、高笑いをしました。そのあとを、ジャックが続けます。 「この城の『秘密の抜け道』は、全部、諸侯に知らせてあります。つまり、逃げ道はありません。教皇軍が到着するまで、おとなしくしていてもらいます」 その言葉を聞いていた王妃でしたが、少しだけ、表情を動かしました。それに何を見たか、ジャックが素早く階段を駆け上がり、王妃の鼻をつまんで、手を王妃の口に突っ込みました。 「危ない危ない。舌を噛み切ろうとしましたね? ……あなたに、自分自身を裁く権利など、ありません。あなたは、衆人による裁きを受け、処断されねばならないのです!」 王妃は、憎悪の目でジャックを睨みますが、それ以上のことはできません。 王子がヨアキムに言いました。 「ストランドバリ候、本当に申し訳ありませんでした。苦しい目に遭わせたあなたに、このようなお願いをするのは、申し訳ないのですが、教皇軍が介入すれば、ここは、混乱します。事情をご存じのあなたに、事態収拾のお手伝いをお願いしたい」 そして、ヨアキムに頭を下げます。 「王子、お顔をお上げください。私でお役に立てるなら、なんでも、お申し付けください」 その言葉に、王子が再度、頭を下げます。 ふと、階段の上を見ると。 ジャックが笑顔で頷きました。
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