大男が近づいてくるのを見ながら、ヘンゼルは言いました。 「なあ、銃から弾が出てくる仕組み、知ってるか?」 「はあ? 何を言ってるんだ、小僧?」 大男が訝しげな表情になります。ですが、すぐに。 「変な時間稼ぎはやめることだな」 と、またニヤついて、近づいてきました。そして、床に転がっているガレキを踏んだ瞬間! ピンと張られていた糸が、切れました。その感触に、男が足もとを見ますが、その時には、糸は重りによって、引っ張られ、壁や天井に仕掛けられた滑車を滑っていました。そして、天井にある滑車の回転により、滑車の中心に仕掛けられた歯車(ギア)、それに噛ませてある歯車と、それに据え付けたいくつものハンマーが回転し、その先にあるいくつもの鉄の筒の尻を叩きました。 次の瞬間! 轟音、硝煙とともに天井にある筒の先から鉛玉が次々に吐き出され、大男の体にめり込みました。筒は大男をグルリと取り囲むように、配置されていたのです。 「オゴワァっ!」 男が絶叫します。 ヘンゼルは、勝利を確信して言いました。 「薬莢の尻にある雷管(プライマー)を、撃鉄(ハンマー)が叩くことによって、中の火薬(パウダー)が爆発し、弾丸(ブレット)を撃ち出す。つまり、その仕組みが用意できれば、『銃』の形をしている必要も、『引き金』を引く必要もない、ってわけさ」 ヘンゼルの解説を聞いているのかいないのか、それはわかりませんが、大男はバトルアクスを振り上げ、身もだえしながらも、ヘンゼルに迫ってきます。 それを見ながら、ヘンゼルはブラックホークを向けました。 「リボルバーっていうのは、手動で弾を込めるとき、ちょっとした細工が出来るんだ。例えば、四発目と五発目をカラ薬莢にしといたら、まるで弾切れのように思わせることが出来て、相手の油断を誘うことが出来る。でも。……入ってるんだなあ、六発目に」 引き金を引くと、その銃口から吐き出された四四マグナム弾が、大男の眉間を撃ち抜きました。 「さすが、いい仕事するよなあ、ジャックとジェニファーは」 ジャックは大げさに、銃口から漂う硝煙を吹き消す仕草をしました。
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