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作品名:歪で歪んだ物語。 作者:ジン 竜珠

第126回   歪で歪んだ物語。12
 女が放ってくるスピアを見ながら、グレーテルは、思い切りのけぞりました。女はまさか相手が仰向けに倒れるほどのけぞるとは、思っていなかったのでしょう、そのまま、スピアを地面に突き刺しました。
 その隙に、グレーテルは右手でツヴァイハンダーの鍔(つば)を持ち、左手で柄を握りました。そして、柄にある「スイッチ」をひねります。そのまま、柄を引き抜くと、そこからダガーが現れました。女の得物は、バスタードソードの柄の先からスピアが伸びていますが、まさにそれを模したように、グレーテルのツヴァイハンダーの鍔の部分から、ダガーが伸びているのです。柄は、まさにダガーの鞘でした。
「! それは、まさか!」
 女の表情に驚愕が浮かびます。しかし、それに構わず、グレーテルは地を転がり、その勢いを使って立ち上がり、すぐさま身をひねってダガーを女の左の頸(くび)に突き刺しました。
 息を吸い込むような、ひっくり返った声を上げ、女が引きつります。グレーテルは、勝利を確信して、言いました。
「知ってるかしら、『指姫』ジェニファーのこと? これ、彼女が細工してくれたの。まさか、役に立つとは、思わなかったけど。さすがよね、ジェニファーの技能」
 女が、少しだけ口元を歪めます。笑っているかのようですが、それは完全に失敗しています。そして、目だけをギョロリと動かして、言いました。
「……ええ、ほんとう、に……いい、しごと……するわよ、ね……、『ゆびひめ』……は……。ワタシの……これ……も……」
 最後まで言うのを待たず、グレーテルはダガーを引き抜きました。女の頸から鮮血が迸ります。最後の抵抗なのか、女が咆哮を上げ、アダーガを地面から抜き、剣の部分をグレーテルに振り下ろしましたが、グレーテルはバスタードソードとスピアを繋ぐ盾の部分を左手で押さえ、ダガーを女の胸に突き刺しました。
 倒れる瞬間、女の表情は笑っているように見えましたが、単なる表情筋の痙攣(けいれん)だったのでしょう。


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