「なぜ、感電しないのか、でしょう? 体に『ゴム』を巻いているの。電気を使う奴が相手だって知ったときから、手配しておいたんです。全身に使えるだけのゴムを手に入れるのは、時間もお金もかかったけれど」 そして、粛清者の目を見ます。 「問います。あなたは、なぜ組織にいるのですか?」 しばらくおいて、粛清者は答えました。 「それが信義だからだ」 「信義?」 「そうだ。自分自身の拠って立つところのもの。それが、私にとっては、この組織だった」 「……おかしいでしょう? その組織のせいで、幸せが壊されているのよ?」 ここで、粛清者が沈痛な表情になりました。 「……そうだな。私は、自分自身の手で、愛する者を葬ったことさえある」 「だったら! なぜ、いまだに組織に従っているのですか!?」 本心からの声でした。だからでしょう、粛清者の心が動き、その顔に、哀しげな色が浮かびます。 「お前の信義は何だ?」 突然、粛清者の方から質問してきました。一瞬、考え込み、次の瞬間には、これが相手の策略で考え込んだ隙に攻撃してくるのだ、と思い至りました。ですが、粛清者は動きません。なので、これまで感じたことをまとめ、答えました。 「組織によって、幸せが壊され、幸せを壊された人がまた、誰かの幸せを壊す。誰一人、救われません。だから、その元凶である組織を潰す。その思いが、私の拠って立つところのものです」 満足したのか、「そうか」と、深く頷いて、粛清者が言いました。 「私は、組織に見いだされ、組織に育てられ、組織に存在意義を与えてもらった。今の私があるのは、組織のおかげだ。組織がなければ、私はいない。だから、組織への忠誠を貫く。それが私の信義だ」 「……言ってもいいですか?」 「なんだ?」 「バッカじゃないの!? 下らないにも、ほどがあるわ! 誰かに与えてもらわないと、自分の存在意義が見つけられないなんて、その頭は飾りなの!?」 粛清者がムッとなりました。そして。 「私からも言わせてもらう」 「……なに?」 「世には『必要悪』というものがある。それを知らぬとは、お前の頭こそ、幼な児と同じだな!」 二人がにらみ合います。次の瞬間、粛清者がダッシュして、間合いを詰めました。拳と手刀の連続攻撃です。捌くのがやっとで、反撃の隙が見えません。どうにか隙を作れないか、と思っていたら、粛清者の左手がアンネの上着の襟を掴み、そのまま、引き裂きました。服と一緒にゴムが引きちぎられ、白くふくよかな胸が露わになります。 「終わりだ! 逝け、妹よ!!」 粛清者が、雷電を放つ拳を構えました。
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