「援護はするけど、期待はしないで? 実際に斬り結ぶことになると、大砲は使えない。……まあ、相手には銃器使いは残っていないから、どのみち、接近戦にしかならないけど」 「つまり、その一撃を避けられたら、ここに乗り込まれるってことか」 ヘンゼルの言葉に、ランヒルドは、二門、続けて大砲を撃ちます。ですが、着弾点で吹っ飛んだのは、エージェントの卵、五人だけでした。さすがに、何回も撃っていると、砲弾がどの角度で、どの位置に着弾するか、見切られてしまっています。思ったほど、大砲の可動域は狭いのでした。 残る一人は若い女。かなり特殊な武器を持っています。幸い、ランヒルドの知識にある、武器でした。 「あれは、アダーガっていう武器。見ての通り、方盾(スクウェア・シールド)の中央に、切っ先を正面に向けた剣、上下に短めのショート・スピアがついてる。防御と同時に攻撃も出来る、厄介な武器よ」 ヘンゼルがブラックホークを向けます。そして女めがけて、引き金を引こうとした、まさにその瞬間! 階下で轟音。 三人が顔を見合わせて、まず口を開いたのは、ランヒルドです。 「……塞いでたバリケードが破壊されたわ」 ヘンゼルも言います。 「あのガレキだの何だのを積み上げた、あれを、か?」 「積み上げたんじゃなくて、爆破で、崩しておいたの。通路の要所要所をね。多分、北砦で無傷だった爆弾とか使ったんだと思う」 グレーテルがツヴァイハンダーを構えます。 「それじゃあ」 ヘンゼルが頷きます。そして、ランヒルドに言いました。 「ここは、頼む!」 グレーテルが大剣を手に、壁の穴から、飛び降りました。 それを確認して、ランヒルドも答えます。 「いつでも大砲が撃てるようにしておく。いざって時には、ここを爆破してでも、あいつらを潰すから、必ず、逃げなさい! 生きて再会しましょ? それとも、『いいこと』、する?」 軽口を叩くと、ヘンゼルが顔をしかめて言いました。 「しねえよ!!」
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