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作品名:歪で歪んだ物語。 作者:ジン 竜珠

第119回   歪で歪んだ物語。5
 ジャックはトラップを仕掛け終え、王都へと帰りました。
 ヘンゼルがランヒルドを見ます。
「なあ、あと、どのくらい、戦力が残ってるんだ?」
 その言葉に、ランヒルドは記憶の糸をたぐります。
「エージェントの卵が五人程度、ガード……戦闘のプロが二人よ。ほかは、おそらく砲弾で爆死、ガレキで圧死、北砦経由で逃亡。それと、それ以外の奴は」
 と、ランヒルドはアイソポスから託されたハルパーを見せます。ヘンゼルが頷きます。
「なるほど、腕は鈍ってないってか。ゲルダから探査結果を聞かされたときは、どうか、って思ったけどよ」
 ヘンゼルの顔に浮かんでいるのは、苦笑いでしたが、それはランヒルドのことを茶化したものでないことは、理解できます。
 ランヒルドは、辺りを見ながら言いました。
「とりあえず、だけど。北砦から通じている通路は、東西とも塞いであるから、来るとすれば、南砦正面から。でも……」
 と、外を見て、ランヒルドは首を傾げました。自分の目算と、少し違うのです。
「どうした?」
 と、ヘンゼルも、外を見て、目つきを険しくします。
「来たか……」
 ヘンゼルのその呟きに頷きながらも、自分の考えていたことと違うと思い、ランヒルドは言いました。
「ええ。でも、一人、足りない」
 グレーテルが、やはり厳しい目でランヒルドを見ました。
「足りない? どういうことかしら?」
「バトルアクスを使う、あの大男がいない」
 ヘンゼルとグレーテルが、外の様子を見ます。
「昨日、砲弾を撃ち込んだけど、命中には至らずに、逃げられたわ。だから、まだ生きてるはず。……どうしたのかしら?」
「怖じ気づいて、隠れてるんじゃねえのか? まあ、とにかく」
 と、ヘンゼルが銃を抜きます。
「グレーテル、決戦だ。生きて再会しようぜ」
 その言葉に、グレーテルがむくれます。
「ヘンゼル、違うぅ! いつもは違うこと言ってるでしょ?」
 ヘンゼルがちょっとだけ考えてから、余裕の笑みを浮かべて言い直しました。
「グレーテル、終わったら、いっぱい『いいこと』しようぜ?」
「うん」
 グレーテルが笑顔で頷くと、二人は抱き合い、熱い口づけをかわしました。
 なるほど、この兄妹は、そういう関係だったか。そう思いながら、ランヒルドは大砲に弾を込めます。


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