ジャックが大広間を出たあと、ヘンゼルはしみじみと言いました。 「それにしても、あっけなかったな、組織の壊滅」 自分たちの敵である、組織。きっと長くて辛い戦いになると思っていましたし、実際、六年かかっています。ですが、いざ、攻勢を掛けると、わずか十日ほどで壊滅状態に出来ました。 「組織って、そういうものよ? 自分たちは大丈夫、っていう驕り、秘密の組織だから、潜入されることはないだろうっていう油断、これまで何もなかったから、これからも大丈夫だろうっていう狎(な)れ。そういうのが絡み合うと、あっけないの、組織って。……ねえ、ヘンゼル。あなたたち、色んな場面で連戦連勝らしいけど、……特に組織のエージェント相手に、確実に勝ってきたそうだけど。なぜ、勝ててこれたと思う?」 いきなりの問いに、ヘンゼルは、少し考え、答えました。 「ジャックの作戦と、トラップ、かな?」 そのあとをグレーテルが続けます。 「あと、ジャックの言う通り、対エージェント戦では、絶対に一対一にならなかったことかしら? 『相手は戦闘のプロだから、複数で当たること』って言ってたわ」 「なるほど。……やっぱりね」 ランヒルドが納得したように言いましたが、ヘンゼルには、今イチわかりません。 ヘンゼルやグレーテルが不思議そうに顔を見合わせたので、ランヒルドは笑顔を浮かべて言いました。 「あなたたちは、ジャックを中心にまとまってる。そのジャックは」 と、ジャックが作業をしている部屋を見ます。 「ラプンツェルの幸せを考えてる。自分の目と手の届く範囲のことを、一所懸命に守ろうとしてるのよ、彼は。だから、強いの。一方、こういう組織は、目も手も届かない、ブラックスポットが出来てしまってる。そして」 と、足もとの皮袋を見ます。 「こんな風に、不正蓄財する輩も出てくるし、夜襲を受けても、連携が全くとれない。だから、弱いの」 「ふうん。そんなもんかねえ」 と、ヘンゼルがグレーテルを見ると、グレーテルは肩をすくめるだけです。
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