呆然となって、ヘンリケが言いました。 「……すごい、エステル……」 その言葉を称賛ととらえたエステルは、誇らしい気持ちになって、笑顔を浮かべ、続けました。 「結論だけ言うと、多分、ラプンツェルはエーケンのどこかにいる可能性が高いと思うの」 その時。 「それ、本当?」 いきなり、声がしました。驚いて振り返ると、そこにいたのは、ビルギッタ。 二度、驚きました。この驚きの意味は。 「ごめんなさい、ビルギッタ先輩! あたし、勝手に資料を見ちゃいました!!」 ヘンリケが、「え? なに、それ?」と、きょとんとなります。 バツが悪いものを感じながら、エステルはヘンリケに言いました。 「この間の夜、ビルギッタ先輩が図書室でなにかの資料を見て、唸ってたの。で、先輩は何か用事があったのか、資料をそのままにして、図書室を出て、あたし、ちょっと興味があったから、覗いたの。それで、面白そうだったから、それを読んでいたら、なんか、わかっちゃって。先輩は戻ってこないし、だから、あたし、朝までかけて資料を書き写して、あと、必要な資料を、大聖堂で閲覧して調べたの」 「……そう」 それを聞いて、そう呟いたビルギッタの表情は、何か、微妙なものでした。ややおいて。 「ねえ、エステル。今晩、時間あるかしら?」 ビルギッタの言葉に、エステルは首を傾げます。 警戒させないようにするためか、ビルギッタは珍しく笑顔になって言いました。 「このことを、ルーペルト様にご報告するの。きっとあなたの立場は、いいものになるはずよ」 思いがけぬ言葉に、エステルの胸に小さな、でも確かな喜びが生まれます。 「本当ですか!?」 「ええ」 と、ビルギッタも微笑みます。 「じゃあ、エステル。今夜、あなたの部屋に迎えに行くから、正装しておくのよ?」 「はい!!」 エステルの返答に、また笑顔で頷き、ビルギッタは去って行きました。 まさか、このような形で認められることになるとは! 「エステル」 と、ヘンリケがエステルを見ました。 「なあに、ヘンリケ?」 「……あなた、今、とてもいい笑顔になってる。瞳に星が輝いてるわよ」 ヘンリケも嬉しそうに、笑顔になりました。 胸の高鳴りを押さえるのが、精一杯のエステルでした。
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