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作品名:歪で歪んだ物語。 作者:ジン 竜珠

第107回   みにくいアヒルの子の物語。3
 ここは、組織の本部です。王都の北西の方角へ、馬車で五日。そこの平原にありました。建物の数は全部で七つ。
 まず中央にあるのが、本部中枢である、通称「大聖堂」。石造りの四階建てで、大都市の大聖堂よりも大きい建物です。おそらくこの建物だけで、小規模の教会が十棟は入るのではないでしょうか? 東と西に宿舎が一つずつ。どちらも五十人まで、収容できます。北にあるのは、幹部しか入れない秘密の塔。中がどうなっているのか、不明ですが、「お仕置き部屋」があるというのは、確かなようです。西の宿舎のすぐ南には、エージェントたちの習練場。様々な技能に応じた部屋があるため、宿舎よりも大きく、また、窓の数も少ないのでした。
 それらを囲うようにあるのが、北の防衛ライン……北砦(ほくさい)と、南の防衛ライン……南砦(なんさい)です。南北両砦は文字通り、砦(とりで)であり、一階には作戦会議をする大広間や資料室、メンバーの夜間簡易宿泊所などがあり、二階から上は砲台や武器などが格納されています。そして、ひときわ高く、物見櫓(ものみやぐら)の塔が、実に二十ファゾム(約三十六メートル)の威容を誇っているのです。そして、その周囲を、幅五ファゾム(約九メートル)、深さが十ジャーマンエル(約四メートル)ほどの堀で囲み、南砦または北砦からの跳ね橋でのみ、往来できるのです。
 この建物群は、もともと、この王国が建国される以前に権勢を誇っていた、旧帝国が建設した、国境警備用の要塞都市でした。建国時は接収して使用されていましたが、平和が長く続き、いつの間にか必要とされなくなったのです。もう何十年も前にうち捨てられていたのですが、そこを組織が、密かに使っているのです。
 なぜ、王国がこの要塞都市跡に重きを置かないのか。防衛上、この要塞都市よりも重要で、もっと近くに、要塞を築いたこと、また、現在では、北の国が弱体化して平和条約が結ばれたことにより、この都市そのものの記録が、埋もれて顧(かえり)みられなくなっていることが、大きな理由でした。


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