ジャックはグレーテルたちにも声をかけ、会場を抜け出し、人目のない外回廊へ出て、ジャックは言いました。 「組織を潰した後、僕は、王家も潰します」 その言葉に、一同の間に、緊張が走ったようでした。ヘンゼルが頭に自分の手を当て、呆れたように言いました。 「あんなもん見ちまったから、お前の気持ちもわかんないでもねえけどさ」 「いやならいいんですよ?」 その言葉に、ふう、とヘンゼルは溜息をつきます。 「私は構わないッス! 組織を潰せるんなら、そっちの仕事も手伝います!」 何があったのでしょう、会場を抜ける前に見た時と、今とで、ジェニファーの表情、いえ、纏(まと)っている空気が違います。まるで怒り一色でした。小声でグレーテルが、「友だちが粛清者に殺されてて、怒りを新たにしたみたい」とヘンゼルに言うのが聞こえました。 カイとゲルダはお互い、顔を見合わせ、うなずき合いました。 「オレたちは、あんたに助けられた。だから、あんたの助けになれるんなら」 ゲルダの言葉にカイも頷きます。 アンネは、柔らかな笑みで言います。 「私は、もとより、あなた方に支払われた『報酬』ですから、どこまでも従います」 すると、溜息をついて、ヘンゼルがジャックの前に右の拳(こぶし)を突き出します。 「俺たち兄妹を拾ってくれて、ここまでにしてくれたのは、お前とラプンツェルだ。だから、お前について行くよ。何でも言ってくれ」 「……ヤケになってませんか、ヘンゼル?」 「うっせーよ! 気持ちが変わんねえうちに……!」 そう言ったヘンゼルの右拳(みぎこぶし)に、ジャックは自分の右の拳を打ち合わせます。すると、グレーテルも右手の拳(こぶし)を差し出します。今度は、ジャックだけでなく、アンネたちも、打ち合わせてきました。 「では、早速ですが。ゲルダ、君には探して欲しい『人』がいます。カイ、君には、分析して欲しいものが、ジェニファー、君には、いろいろと細工してほしいものが……」
そして、彼らは決戦の時を迎えるのです。
(狼と七匹の子山羊の物語。・了)
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