「いいかい? 悪魔は、処女がお好みだ。だから、処女を奪うようなことはしちゃダメだ。でも、それ以外なら、何をやったって、構わないよ」 「王妃様! いったい……妾(わたし)がいったい、何をしたというのですか!? このような仕打ち、人間のすることでは……!」 「そうさねえ……。何をやったか……。しいて言うなら、ストランドバリの娘だってことかねえ」 地下にある部屋の一室の扉の前にいると、そんなやりとりが聞こえてきます。どうやら、王妃とストランドバリ候の娘・マルグリットの声のようです。やがて、男たちの下卑た笑い声がいくつもいくつも聞こえ、それにあわせて、何かが風を切る音、少女の悲鳴・泣き声。 ジャックとヘンゼルは少しだけ扉を開けて中を覗いてみました。薄暗い中で展開される「それ」は、とても正視に耐えるものではなく。 「うわあ、こりゃあ、悪魔崇拝っていうより、あいつら自身が悪魔じゃねえか。……ああ、そうか、悪魔を自分の体ン中に召喚してやがんのか」 ヘンゼルがそう呟くのを聞き、ジャックは小声で言いました。 「……戻りますよ、ヘンゼル」 「え? いいけど? 助けねえの、マルグリットのこと?」 「今は、まだ、王家を攻めるほどの『力』がありません。ここで乗り込んだら、『王家』という『力』をなくして、組織と闘えなくなるか、同じことをマルグリットにして、信用を得るしかなくなります。彼女には申し訳ないけど、耐えてもらいましょう。命が取られるようなことは、ないはずです。王妃からすれば、楽にマルグリットを死なせるようなことはしないはずですから」 「……ジャック、お前、なんか知ってンな?」 それには答えず、ジャックはパーティー会場へと向かいました。
|
|