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作品名:歪で歪んだ物語。 作者:ジン 竜珠

第1回   ジャックと豆の木の物語。前編
ご挨拶

 皆様、初めまして。
 ジン 竜珠と申します。
 以前、「小説&まんが投稿屋」様で活動させていただいていましたが、同サイト様が閉鎖なさることになりました。どうしたものか、と思っていた矢先、ある方からこちらのサイト様をご紹介いただきましたので、お世話になることに致しました。
 実は「小説家になろう」様でもお世話になっていて(あちらでは「ジン竜珠」の名前です)、いろいろと書き散らかせていただいています。
 しばらくは過去作のお引っ越しをさせていただきますが、落ち着きましたら、何か新しく書かせていただければと思っております。
 これから長く、おつきあいいただけましたら。
 よろしくお願いいたします。
 ……お手柔らかにね(苦笑)。

◇    ◇

 昔々、グレート・ブリテンで、あったことです。
 ある街外れに、ジャックという少年が、母親と一緒に住んでいました。二人の生活はとても貧しく、飼っている牛が出す乳(ちち)を売って、どうにかその日の糧(かて)を得ていたのですが、とうとう、その牛も乳を出さなくなり、母子(おやこ)は、その牛をも売ることにしました。
「いいかい? 金貨十枚で売ってくるんだよ?」
 母親はそう言いましたが、乳を出さなくなった痩せた牛、金貨六枚でも売れるかどうか。
 このあたりは母親もわかっています。だから「お前の才覚で、金貨十枚の値打ちがあるように見せるんだよ」と、母親がその目で言っているのを、ジャックは見てとりました。
「さてさて、どうやってだまくらかそうか」
 道々、ジャックは考えました。
 この牛は、三日に一度、乳を出すが、その乳は一口飲めば、百日寿命が延びる。
「そんな牛を手放すはずは、ないか」
 この牛は、痩せているが、実はとても頑強で、どんな畑仕事も、普通の牛よりもこなすことができる。
「……手放さないよなあ、そんな牛」
 この牛は、不思議な牛で、肉を切り取って食べても、翌日には元通りになっている。
「だから売らねーって、そんな牛!」
 結局、いい売り文句を思いつかないまま、市場に着いてしまい、牛は金貨五枚で売れました。
 それでも、売れないよりはマシです。
 これで何日かは食いつなげますが、そこから先が心配です。
 とりあえず、金貨一枚で、石のように硬いパンと、カビが生える寸前の果物と、水のように薄い果実酒を買い、お釣りの一部で木彫り細工用の小刀を買って、ジャックは帰路につきました。
 小刀を買いはしましたが、ジャックにそのような技術があるわけではありません。ただ、それらしいものは作ったことがあるので、これで何か商売をしようと思っているのです。
 帰り道、ジャックはいつもと違う道を通りました。そこは、ジャックたちのような貧しい者たちが住む街外れではなく、金持ちが住む大通りです。
 そこにある看板や、柱には、芸術に疎いジャックの目から見ても、見事な細工があります。それを少しでも覚えようと思ったのです。
 まだお昼前、ぶらぶらと歩いていると、何かが頭に当たりました。
 なんだろうと思い、足もとを見ると、豆が転がっています。刀豆(トウズ)でした。
「上から落ちてきたのかな?」
 見上げると、四階建ての立派な邸宅です。窓枠の飾りも贅を尽くしており、かなりの金持ちなのは間違いありません。
 そして、四階の窓から、一人の女がこちらを見下ろしています。
 ジャックが見たこともない美しい女でした。
 見とれていると、女が何やらイヤらしい微笑みを浮かべ、いったん部屋の中へと引っ込みました。
 次に出てきたとき、女はシーツを結びつけて作ったと思しき、紐を垂らしました。どんな意味があるのか、その紐は緑色に染めてあります。その緑色は、ジャックの「精神的な未熟さ」をあおっているのでしょうか? それとも、「昇って来ても安心だ」と、言っているのでしょうか? 壁に沿って垂れているその紐は、まるで、豆の「つる」のようでした。
 女が誘うように、ジャックを見ています。ジャックは、買ってきた荷物を邸宅のそばに置き、紐を昇っていきました。
 部屋に入ると、女は微笑んで、ジャックを寝台(ベッド)に誘いました。


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