「今日は買い出しに行くよ」
満足感のない食事を食べてから、バーナードは言った。
「武器の扱い方がまだだし、地上の説明もまだですが?」
「君が地上に出ても、どうにかなるとは思えないからね。それに、実地の方が君に合っていると思うんだ」
『そんな……』
「ルーキーよ、外には温かい食事があるし、いい女もタップリいるんだぜ。ヒヒヒ」
ウィラーは、馴れ馴れしく肩を寄せてきた。
「確かに、温かい食事が食べたいですよね」
臭いを出す事を禁じられているので、煮炊きした料理は出ないのだ。
『すみのの手料理は美味しかったな』
「おい、まだ赤ん坊じゃねぇのか? いい女に飛びつかないなんてよ」
ヒューイがすみのの手料理に思いを馳せていると、ウィラーに呆れられていた。
「あなたは、遊び過ぎですよ。いったい何人の子供を認知するつもりなんですか!」
それをバーナードが嗜めている。
「あーあ、ここには、堅物とガキしかいねえのかよ」
ウィラーは、フイッと席を外してしまい勝手に出掛けてしまったようだ。
「あの、ウィラーは一緒には行かないんですか?」
「あいつは、どうせ途中で居なくなりますから、放っておけばいいですよ。それより、ヒューイが来てくれて本当に助かります」
『真面目なバーナードに仕事を押し付けているんだ。俺の面倒もみなければならないから大変だな。迷惑をかけないようにしないと』
ヒューイは、そう決心する。
「二人でどれくらい買うんですか?」
「まあ、五人の食料一週間分だから大量になるかな」
「そうですか。それじゃあ早く行きましょう」
空気孔は大きくなったので、再び激突する事はなかった。
すんなり外に出られたが、180度碧海が広がっていて、洞窟の上は緑が生い茂った森だった。
話すとステルス機能が無くなってしまうから、黙ってバーナードの後に続くヒューイ。
だが、スピードのコントロールが上手くいかずに、暫く暴走してしまった……。
『ああ、早速迷惑を掛けてしまったよ』
それから、やっとコツを掴めてバーナードに続いたのだった。
古びた細く長い木を目印に降り立ち、周囲を警戒してからその樹木の洞に入って行ったのだ。
『ん?』
洞に見えたが、そこは小屋の中だった。
バーナードが飛行服を解除したので、ヒューイもそれに倣う。
「見事な暴走だったね。あれ以上かかるようだったら、今日の買い出しは中止になっていたよ」
笑ってくれたのでホッとした。
「でも、何故中止にするんですか?」
「君は、まだ飛べるようだけど、大抵は30分ぐらいが限度だからね」
「時間制限があるんですか?」
「右上辺りに赤い数字が見えなかったかな?」
「全方向オールクリーンです」
ギョッとした顔をされた。
「この森を抜けるのに乗り物があるんだ」
誤魔化すように外に出てしまったバーナード。
ヒューイは、さっきの洞からここの空間が繋がっているのだなあとボンヤリ理解したのだ。
「ピュイー〜ッ」
バーナードが指笛を鳴らすと、森の奥から黒い大きな塊が飛び出し、双頭がバーナードを襲った!
「危ない!」
叫んだが武器を持っていなかったので、咄嗟に落ちていた棒を拾い上げたのだ。
「ハッハッハ、元気にしていたか? ライとレフ」
可愛い仔犬のようにバーナードに甘える双頭の狼。
ここではオルトロスと呼ばれる魔獣だ。
180pも身長のない痩身のヒューイでは、一口で丸飲み出来そうな程大きい。
『まさか乗り物って……』
とヒューイがびびっていると案の定バーナードはそれに軽々跨がったのだった!
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