砂地の広場に来ていた。
「隊長は、ほとんど説明していないから、そのままで地上に出るのは危険だね」
バーナードは、待っている間に考えてくれたみたいだ。
「宜しくお願いします」
俺は、大和式に挨拶をした。
「君は、アジア系だったの?」
「ハーフです」
「成る程。では、最初に身を守る為に、ケープの使い方を習得してもらおうかな」
「この取れないやつですね」
「そう。使わない時は、勝手に消えているから放っておいて大丈夫だよ」
『そうだったのか。貰った時は、ずっと弄っていたから消えなかったんだな』
「首のところに着いている魔石に手を翳すと、飛行服になるんだ。やってみて」
俺が恐る恐る翳すと……ん?
「あぁ、すまない。『セケイダヴィステ』だ」
「セケイダヴィステ」
ドクンと心音がした。
身体中、隅々まで光りが走っている感覚が治まると、俺は浮いていた。
「凄いな。最初から浮くなんて」
『頭の中が活性化して、体は無いように感じる』
「まるで一個の脳になったみたいだ!」
「成る程、感覚も私達とは違うみたいだね」
『?』
「それじゃあ次は、あの開いている孔まで飛んでみて」
ドーーン、パラパラパラ……。
「どうした、敵に見つかったのか?」
走ってきた隊長とウィラー。
「バナー報告!」
厳しい口調で命令するバクウス。
「ハッ! 飛行訓練をしておりました」
空気孔に引っ掛かっているヒューイに視線を向けた。
「あの馬鹿は何をしている?」
両手のひらを上に向けて肩を竦めてみせるバーナード。
「ヒュー(口笛)、ルーキーってのは規格外だな」
「ウィラー、軽口叩いてないであれを回収して周囲を確認してこい」
「ヘェーイ」
隊長の鋭い睨みも、大好物ですと言わんばかりのちょっと軽いウィラー。
ヒューイは、瞬時の出来事に放心していて、ウィラーに吊り下げられて砂地に放られてしまった。
「ヒューイ、大丈夫か?」
バーナードが介抱すると、落ち着きを取り戻したヒューイはやっと答えることが出来たのだ。
「俺はただ飛ぼうとして……」
表情を堅くしたバーナードは「スピードか」と言った。
仁王立ちしていたバクウスは、ニヤリと笑ってからここでの飛行訓練を禁止する。と言ったのだ。 □■
あの後、寝ていたシェーマン補佐も絞られて、やっと訓練を再開したところだよ。
「君は英雄としてこちらに呼ばれたのだから、私達とは能力が桁違いみたいだな」
「英雄……俺が」
『何かの間違いだろう』
「ヒューイ、私が能力を見せるから覚えてくれ」
『な、そんな無茶な』
飛行服では兜を被っているので、相手からは顔が見えないが、こちらからは360度丸見えの遮蔽物はないのだ。
俺は、飛行服を解除させられて、逆に飛行服姿になったバーナードは、地に足を着けたまま砂地に同化した。
「これは、ステルス?」
「そうだ。私達はあまり姿を晒せないからね」
「何かコツはある?」
「話しをしなければ自然に他者には見えにくくなる。仲間には見えるから攻撃を当てる事はないから安心して」
次に、海に向かって利き手を向けたバーナードは、スプリンクラーみたいに激しく水を出してみせた。
「ここでは真水は貴重だからね。強弱は自分の感覚でコントロールするしかないから注意するといいよ」
『あれがないと、生活に支障が出る事は間違いないな』
それから向き合ったバーナードは無言だ。
砂地に転がっていた貝を拾って海に投げたが、落ちた音がしなかった。
手で指してから次に耳を指した。
『成る程、何か聞こえにくくしたのか』
程なくして声が聞こえ「武器の訓練は明日にしよう」と言って今日の訓練は終了したようだ。
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