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作品名:海の民の伝記 作者:雷花 羽畄砂

第7回   バーナード
 砂地の広場に来ていた。

 「隊長は、ほとんど説明していないから、そのままで地上に出るのは危険だね」

 バーナードは、待っている間に考えてくれたみたいだ。

 「宜しくお願いします」

 俺は、大和式に挨拶をした。

 「君は、アジア系だったの?」

 「ハーフです」

 「成る程。では、最初に身を守る為に、ケープの使い方を習得してもらおうかな」

 「この取れないやつですね」

 「そう。使わない時は、勝手に消えているから放っておいて大丈夫だよ」

 『そうだったのか。貰った時は、ずっと弄っていたから消えなかったんだな』

 「首のところに着いている魔石に手を翳すと、飛行服になるんだ。やってみて」

 俺が恐る恐る翳すと……ん?

 「あぁ、すまない。『セケイダヴィステ』だ」

 「セケイダヴィステ」

 ドクンと心音がした。

 身体中、隅々まで光りが走っている感覚が治まると、俺は浮いていた。

 「凄いな。最初から浮くなんて」

 『頭の中が活性化して、体は無いように感じる』

 「まるで一個の脳になったみたいだ!」

 「成る程、感覚も私達とは違うみたいだね」

 『?』

 「それじゃあ次は、あの開いている孔まで飛んでみて」

 ドーーン、パラパラパラ……。


 「どうした、敵に見つかったのか?」

 走ってきた隊長とウィラー。

 「バナー報告!」

 厳しい口調で命令するバクウス。

 「ハッ! 飛行訓練をしておりました」

 空気孔に引っ掛かっているヒューイに視線を向けた。

 「あの馬鹿は何をしている?」

 両手のひらを上に向けて肩を竦めてみせるバーナード。

 「ヒュー(口笛)、ルーキーってのは規格外だな」

 「ウィラー、軽口叩いてないであれを回収して周囲を確認してこい」

 「ヘェーイ」

 隊長の鋭い睨みも、大好物ですと言わんばかりのちょっと軽いウィラー。

 ヒューイは、瞬時の出来事に放心していて、ウィラーに吊り下げられて砂地に放られてしまった。

 「ヒューイ、大丈夫か?」

 バーナードが介抱すると、落ち着きを取り戻したヒューイはやっと答えることが出来たのだ。

 「俺はただ飛ぼうとして……」

 表情を堅くしたバーナードは「スピードか」と言った。

 仁王立ちしていたバクウスは、ニヤリと笑ってからここでの飛行訓練を禁止する。と言ったのだ。
 □■

 あの後、寝ていたシェーマン補佐も絞られて、やっと訓練を再開したところだよ。

 「君は英雄としてこちらに呼ばれたのだから、私達とは能力が桁違いみたいだな」

 「英雄……俺が」

 『何かの間違いだろう』


 「ヒューイ、私が能力を見せるから覚えてくれ」

 『な、そんな無茶な』

 飛行服では兜を被っているので、相手からは顔が見えないが、こちらからは360度丸見えの遮蔽物はないのだ。

 俺は、飛行服を解除させられて、逆に飛行服姿になったバーナードは、地に足を着けたまま砂地に同化した。

 「これは、ステルス?」

 「そうだ。私達はあまり姿を晒せないからね」

 「何かコツはある?」

 「話しをしなければ自然に他者には見えにくくなる。仲間には見えるから攻撃を当てる事はないから安心して」

 次に、海に向かって利き手を向けたバーナードは、スプリンクラーみたいに激しく水を出してみせた。

 「ここでは真水は貴重だからね。強弱は自分の感覚でコントロールするしかないから注意するといいよ」

 『あれがないと、生活に支障が出る事は間違いないな』

 それから向き合ったバーナードは無言だ。

 砂地に転がっていた貝を拾って海に投げたが、落ちた音がしなかった。

 手で指してから次に耳を指した。

 『成る程、何か聞こえにくくしたのか』

 程なくして声が聞こえ「武器の訓練は明日にしよう」と言って今日の訓練は終了したようだ。


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